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第7話

本当だったら この辺りで気づけばよかったのに、 相当焦っていたオレは思い出せなかったんだ。 それは それまで好きになっていたのは ちゃんと女の子だったってこと。 とにかく蓮ちゃんにだけはバレたくなかった。 こんな変態な自分のことを 誰にも知られちゃいけないって強く思った。 なによりそういう自分に自分自身が一番ビビって、 怖くてどうにか「普通になりたい」ってめちゃくちゃ思った。 オレにも彼女が欲しい・・・っ そう願った。 彼女さえできればすべてがくるっとまるっと収まるって、 あのとき、オレは本気で思っていたんだ。 そうして、 なんと信じられないことに、 蓮ちゃんに彼女が出来て数日後、 まさかのオレにも彼女が出来てしまった。 蓮ちゃんと一緒に還れなくなった部活帰り、 独りで歩くそのときに、とつぜん、 人生で初めて、オレはその子から告られた。 驚きだけしかなかったその告白を、 オレは勢いだけでその場で即、オッケーした。 そのときの自分にとって 名前も知らないその子は唯一、 なんだか救いの女神のように映っていた。 その子はすごくうれしそうに喜んで、 もちろん、オレも喜んだ。 だって、人生初、彼女が出来たんだから。 これでようやく普通になれる・・・ そんなバカみたいなことを このときのオレは本気で思っていたし、 本当にほっとしていたんだ。 でも、 それからしばらくすると、 オレは前よりさらに落ち込んでいった。 だってその子は好きな相手なんかじゃない。 たまたま告られて、 たまたま変態な自分に気づいた後だったがために、 その子の申し出がなぜか 「普通に戻れるチャンスだ」なんて思ってしまって、 差し出されたその手を 取てしまったってだけの相手なんだから。 本当はきっと もう普通になんて戻れっこないことを、 わかっていたくせに。 気持ちのない中で付き合いだしたその子に、 好奇心と情は沸いても 恋愛的な好きはいつまでたっても芽生えなかった。 だからすぐに別れた。 するとなぜだかまた、 別の子から告白された。 きっとあのとき、 蓮ちゃんがそばにいないさみしさみたいなものを、 無意識に埋めようとしていたのだろう。 こりもせず、 好きでもないくせにまた、そのこと付き合いを始めてみる。 そしてまた、 すぐに分かれる。 そうやって、 隣にいる女の子はどんどん入れ替わっていくようになっていって、 中学3年が終わる、卒業間近には、 気づけばオレは「アイツはたらしだ」って言われるようになっていた。 信じられないことに。

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