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第8話
それからも実際、高校、大学ともうずっと、
彼女と呼ばれる相手はコロコロ変わった。
だって仕方がないじゃないか。
相手は好きなヒトではないのだ。
そんな子たちにはいつまでたっても
興奮も欲情もしないし
愛着もない。
そこにあるのは少しの情だけなのだ。
でもどうしても
「普通」を捨てられなかったオレは、
告られるたびに女の子と付き合った。
そして、
そのたびちゃんと手は出した。
だって女の子はそれを望んでいたから。
でももうそんなのただの自己処理と同じ。
相手は誰だって同じだったし、
なんならその最中に、
蓮ちゃんを想いながら腰を振ってることすらあった。
そうやって勝手に落ち込んで、
落ち込んでることを知られないようにすればするほど
自分のそのウソは簡単にバレる。
女の子はみんなオレなんかよりもずっと、
鋭くてしっかりしてるんだ。
だから遅かれ早かれ別れるしかない。
オレは変態なうえに
どんどん最低ヤローになっていった。
いい加減わかってる。
わかっていて止められない。
そうやって
27になってもいまだに蓮ちゃんを想いながら、
オレにはいまも、好きでもない彼女がいる。
「カクテキうまっ」
オレの葛藤をなにも知らずに
呑気な声を出す蓮ちゃんをジロリとにらむ。
半分、残っていたビールをまた一気に
喉の奥へ流し込んだ。
☆
わりと酒には強い方だ。
たぶん蓮ちゃんよりもオレの方が強い。
でもなんだか今日は酔いが回るのが速い気がした。
頭がぼーっとしてる・・・
「明日はどっか行くの?」
5本目になるビールを開けながら、
ああ、やってしまった・・と思ったときにはもう遅い。
「さぁな。決めてねぇ」
自分からはしないように気を付けている彼女の話題を、
なぜか自ら振ってしまった。
すると
「お前はうまくいってんの?」
・・・と。
今度は蓮ちゃんがそんな話しを振ってくると、
思わず深いため息を漏らしそうになった。
普通の友達同士なら喜んでするはずの彼女とのいろいろを、
オレはできれば蓮ちゃんとはしたくはない。
聞きたくもないし言いたくもない。
好きでもないのに付き合う彼女とのことを、
いったい、どうやって話せばいいのかがわからないから。
「・・普通だよ。」
「ふーん。」
聞いた割にはたいして興味がなさそうな蓮ちゃんに、
喜ぶべきなのかなんなのか。
複雑な気持ちになりながらとりえずオレは黙る。
すると、蓮ちゃんもそれからなにも聞かない。
きっとなんとなく二人とも感じている
妙な空気を誤魔化すように、
ほとんど二人同時にビールを飲んだ。
ビールを作ったヒトと
ビールそのものは神だ。
だっていつだってこうして、
逃げ道を作ってくれるのだから。
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