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第15話

「・・・やっぱ冷たい。」 ぽつりとつぶやいた一言に、 「そりゃ良かった。」 どこか呆れた声でそう言われて、 思わずじろりと蓮ちゃんを見る。 「なんだよ。良かっただろ? 冷えてないビールほどまずいもんはねぇじゃん。」 清々しい顔をして、 蓮ちゃんは正しいことを言う。 キレイでたくましくて正しくて・・・ オレは蓮ちゃんに腹が立つ。 こんなに近くで おんなじビールを飲んでいるっていうのに・・ きっと オレのいる世界と 蓮ちゃんがいる世界は ぜんぜん違う世界なんだ。 腹が立つと同時に悲しくなった。 「ん?なに?どうした?」 黙ってしまったオレをのぞき込むみたいにして そのキレイな顔を近づけるから、 今度は慌ててへらっと笑った。 「もう一本ちょうだい。」 言いながら、 手元のビールに口を付ける。 隠してんだから当然だし、 気づかれたら困るくせに、 自分の気持ちに少しも気づかない蓮ちゃんに 自分勝手にイラっとして そうして勝手に傷ついたりもする。 ホント、こんな自分は好きじゃない。 いい加減、やめたいって思う。 いつか終わる時が来るだろうか。 蓮ちゃんとがムリならせめて、 この先の未来のどこかで、 オレが好きで おまけにオレを好きになってくれる人が 現れて欲しい。 そうして金曜の夜には、 週末するデート相手は、 一緒に映画デートする人は、 相思相愛な人がいい。 なんのとりえもない、 普通とはかけ離れたオレにだって、 幸せになりたい願望はある。 これまでの彼女たちを どれほど傷つけてきたかをわかっているとしても。 「はいよ。」 「まだビールある?」 もう一本を取り出して手渡してくれる蓮ちゃんを 冷蔵庫の前から追いやると、 自分で冷蔵庫のドアを開けた。 「え?まだ飲むの?」 答えずに、 奥に置いてるビールを蓮ちゃんに手渡していく。 濁った自分を受け入れて ・・・あきらめて。 笑顔で蓮ちゃんを見る。 「蓮ちゃんも付き合って。」 最後のひと缶を押し付けるようにして持たせると、 目が合う蓮ちゃんはさわやかに笑った。

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