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第19話
☆
「はぁ・・さすがに飲みすぎた。」
「確かに蓮ちゃんはちょっと飲みすぎ。」
「お前だってかなり飲んでただろ。」
お日柄の良い秋の終わりの土曜日の夜。
酔っぱらった友達数人に、
これまた酔っぱらってるオレら二人は手を振ると、
夜道をプラプラ歩き出す。
こんな時間に
こんな風に二人で外を歩くのはとても久しぶりで、
明らかにどこか浮かれ調子だ。
オレにとって結婚式ってのは、
久しぶりに友達に会って、
おめでとうと言いながらの体のいいただの飲み会だ。
タクシーに乗った途端、
急に二人ともどこか冷静さを取り戻すと、
なぜだか二人してため息をついた。
「さすがにちょい疲れた。」
「楽しかったけどね。」
「まぁね。」
昨日の夜の金曜日。
今日が友達の結婚式だとわかっていても、
蓮ちゃんはいつものように残業終わり、
いつものようにスーツ姿でオレの家の玄関前に現れた。
少し驚いて少し・・・嬉しかった。
まるでいつもと変わらない蓮ちゃんが。
だから今朝は
平日とほとんど同じ時間に起きると
洗面台を取り合いながらバタバタ着替えて用意して、
必然的に式場には二人して一緒に向かった。
式は午前中に始まるけど、
そのまま二次会があり三次会があり、
気づけばもうあっという間に日付の変わる時間になっていて、
そうして、
オレも蓮ちゃんもヘロヘロだ。
「やっぱ年かね。」
「27で年とかいうの言うの、ホント止めて。」
「でも明らかに酔いの回りがはえぇ。」
「それでも言わないで。」
二人とも、いままでどこでなにをしていたのか、
なんともわかりやすい
象徴的なそのでっかい紙袋を膝の上に置いて、
なんだか妙なテンションだ。
ふわふわと気持ちがいいのに、どこか気だるい。
「ザーサイある?」
「え?」
「ねぇの?」
「だって・・・」
「だってなに?」
今日は土曜日だから・・・と。
オレはなんとなく言うのをためらう。
「ってかビールもないよ。
昨日みんな飲んじゃったでしょ。」
今夜も泊っていくの?・・とか、
彼女はいいの?・・とか。
聞きたいことをストレートに聞けずに
様子をうかがう。
「じゃ買ってくか。」
「まだ飲むの?」
「ってかクセみたいなもんじゃん。
一日の終わりに
家についたらとりあえず缶を開けるってのが。」
「あんまり良いクセじゃないよね。」
「まぁな。」
土曜の夜。
めでたいことがあった一日の終わりに
蓮ちゃんが帰る「家」がオレの家なのは、
どこかくすぐったくてなんだか気分がいい。
だから・・・
「・・明日の朝はうどんにしようか。」
やっぱり、
ストレートには言えずに
蓮ちゃんを見ないようにしてそんなせりふを吐いた。
「あ~いいね。溶き卵いれて。」
「じゃタマゴも買わなきゃ。」
さりげなく、けれどしっかりと
泊まっていくってことをしっかり確認する。
蓮ちゃんが2日連続でオレの部屋に泊まるのは、
覚えてる限りでは初めてだってことを
酔ってる頭で考える。
オレは静かに心が弾んでいた。
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