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第22話

無意識にゴクリと唾を飲む。 これはヘンな意味じゃない。 だた、寝苦しそうだから ベルトくらいは外してやろうと思っているだけだ。 本当は触ってみたい、 興味しかわかない、 すぐソコにあるその場所に 視線がいかないよう意識して、 ゆっくりとベルトを外す。 カチャカチャと鳴る小さな金属音が、 やたらと大きく耳についた。 動かす指先を止めないで 呑気な寝顔を見つめると、オレのどこかがズキズキとする。 きっとたぶん、初恋だった。 それまでにも好きな子はいた気もするけれど、 それは恋愛ってものじゃあない。 本当に人を好きになったのはこの男がはじめてで、 オレはいまだにその想いを引きずっている。 おまけにもうずっと、 好きな相手にウソばかりをついている。 ベルトを外して靴下を脱がしてあげても まったく起きる気配がないその寝顔を見つめて、 なぜか今日の友人の 幸せそうな姿が勝手に頭ん中を流れた。 オレは一体いつまでこんなことをしてるんだろう。 蓮ちゃんはいつまでこんな風に 週末を一緒に過ごしてくれるんだろう。 『心配してやってんの。』 いつか言われた言葉を思い出す。 みんなに祝福されてた二人を思い出す。 蓮ちゃんだってもうそろそろああして、 幸せな未来をつくっていくんだ。 笑って・・・おめでとうが言えたらいいのに。 そろそろいろんなことを諦めて・・・ 蓮ちゃんを諦めて・・・ いかなきゃいけない・・・ 酒が抜けない頭を抱えて独り悶々とするオレは、 豪快にイビキをかきはじめた蓮ちゃんに だんだん腹が立ってくる。 というか、なんだか悲しくなってくる。 「ホントに・・・なんで来んの?」 来なくなったら寂しいけれど、 こんな気持ちになるのだってツラいのだ。 出口はどこにあるだろう。 勝手に迷ったとはいえ、 オレだってそろそろ救われたい。 そう思うのに・・・ 友達が結婚した夜にオレは蓮ちゃんといて、 オレばかりが浮かれていて、 あれだけ飲んでも風呂に入っても、 頭ん中は蓮ちゃんだらけだ。 どうやったら 蓮ちゃんへのこの気持ちは変わるんだろうか。 どこか感傷的なのはきっと酒のせいだ。 だって今日は明らかに、 いつもとは違う酒だったから。 でもきっと、酒の力を借りて 心ん中ではずっとずっと思ってることが、 表面に出てきちゃってるんだろうってことも、 酔っぱらった頭でもわかっていた。 身体が無意識に、 起きる気配がない蓮ちゃんに近づく。

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