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第23話
いまならなんでも酒のせいにできる気がする。
おまけに、なぜだかいましかない気もする。
蓮ちゃんの、
無防備な唇を見つめてドキドキする。
その唇は紅くて色っぽいカタチをしていて、
いつだってオレの視線を釘付けにする。
本当はもうずっと、触れてみたくて仕方がない。
オレの指先で
オレの唇で
その入り口をふさいでみたいと
何度だって思ってる。
そしてきっと蓮ちゃんは
本当はソレに気づいてるんだって思う。
気づいていて笑うんだ。
笑ってオレを呼ぶ。
オレの苗字を。
これだけ長くそばに居たって、
この特別な唇は
オレを瑞樹とは呼ばない。
それはきっと・・・わざとだ。
「蓮ちゃん。起きないの?」
頭ん中がなんだかグルグルする。
成就できないモヤモヤのぜんぶを
ナニカのせいにしたくて、懸命にこじつけを探してる。
きっと2日も連続で
この部屋にいる蓮ちゃんがいけない。
何にも知らないで、
こんなオレをずっとそばに置いているのがいけない。
視線が蓮ちゃんの唇から離れない。
いつも思ってた。
柔らかそうだなって。
どんな感触なんだろうって。
「蓮ちゃん・・」
ずっバランスを保もってたのに。
それを崩した。
崩された。
・・・いったい誰に?
・・・なにに?
☆
ときおり
蓮ちゃんのいびきが響いて・・・
ベッドの中。
息をひそめてもぐってる。
ついさっき、
酔っぱらった勢いで
蓮ちゃんにキスをしようとして結局・・・やめた。
・・・唇にするのは。
ギリギリのところで躊躇して、
引っ込みがつかなくなった近づけた顔をどうにかしなくちゃいけなくなったオレは、
とっさにほっぺにちゅっとした。
蓮ちゃんが眠っているのに、
そのほっぺに唇をくっつける瞬間、なぜだかオレも目を閉じた。
一瞬だけですぐに離れた。
思わず両手で口元を覆った。
ほっぺだけでもバクバクがすごかった。
頭が一気に目覚めた気がした。
大丈夫かなと突然思って、
それはいったい何に対して「大丈夫かな」なのかもわからずに、
手のひらで唇を隠したままで視線がキョロキョロした。
ヤバい。
これはまずい。
なぜかそうも思った。
後ずさるみたいにしてそこから離れると、
電気を消して慌ててベッドにはいる。
・・・で。いま。
「子供かよ・・・」
天井を見上げながら、自然とため息が出る。
いまだにドキドキが止まらない。
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