25 / 82

第24話

ほっぺにキスをしたところで、 それも、 蓮ちゃんの知らないところでそんなことをしたって、 そんなことは何の解決にもならない。 意気地のない自分を改めて知って落ち込んで、 さらには罪悪感までもが増えた。 さらに悪いことに 蓮ちゃんを好きだって気持ちも 余計に膨らんでしまった。 無意識に自分の唇をなぞって、 あのほっぺの柔らかさを思い出す。 蓮ちゃんのほっぺ。 男のほっぺにはじめて触れた。 ・・・唇で。 オレは今までそういう意味では一度も、 男に触ったことはないし触られたこともない。 本当はとても興味があるのに。 それは中学二年のあのときからずっと、 自分が世間的に普通でいることがとても大切なことだったからだ。 だからいまだって、 見せかけだけの彼女に一生懸命に笑ってご機嫌を取っているんだ。 普通でいられなくなることが怖すぎて、 いままでどうしても男同士のあれこれに、 自分から足を踏み入れようとは思わなかった。 そんな勇気はなかった。 それがいま、 少し前に蓮ちゃんのほっぺに触れてしまって、 男と付き合うってことを少しだけ考える。 一度でも触ってみたらわかるだろうか。 誰だっていい。 男に触れて、そして触ってもらえたら・・・ なにかが変わるってことが あるかもしれない・・・なんてことが。 でもそれにはかなりの勇気が必要にはなる。 いままで見繕ってきたぜんぶを捨てるってことだから。 「もう・・・オレってホント、ひとりでバカみたい」 眠ってる蓮ちゃんに キスすることすら出来なかったオレが、 そんなたいそうなこと、出来るわけないと思いなおす。 お酒って怖い。 何でも許されて、 何でも出来ちゃう気になるから。 すると「ぐぅ」っと 蓮ちゃんのいびきが鳴る。 少しだけドキリとした。 そうして、 オレは少しだけ考えて起き上がると、 掛け布団だけを引っ張り出して、 後ろめたいことをしてしまったことを謝るみたいに丁寧に、 それを蓮ちゃんにかけてやる。 「ごめんね。蓮ちゃん。」 心からそう言った。

ともだちにシェアしよう!