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第25話

☆ 「はよ」 キッチンから、 ようやく起きたらしい蓮ちゃんをチラリと視界に入れて、 何でもないって顔をして声をかける。 「・・みず・・」 カラカラの声でそう言われて 思わず笑った。 「ったくもぅ・・・」 なんて言いながら、 ホントはドキドキしてる心ん中を見透かされないようにいつも通りを装って、 グラスにサーバーから水を注ぐと蓮ちゃんに近づく。 「身体いてぇ。」 「そんなところで寝るんだもん。」 「起こせよ。」 「起きなかったんでしょ。」 グラスを渡すとサンキューと言って ゴクゴクっと音を立てながら一気にそれを飲む。 やっぱり無意識にのどぼとけに視線がいって、 胸がキュウっとした。 明らかにいつもと同じの蓮ちゃん。 蓮ちゃんは眠ってた。 そんなことはわかってる。 だからあなんあことをしたんだから。 つまりはバレてない。 そしてバレてなくて良かった・・?のだろうか。 「シャワー浴びていい?」 「ってか、お湯たまってるよ。」 「お。サンキュー。・・の前にもう一杯。」 寝起きの少しむくんだ顔が なんとも愛おしい。 グラスを受け取って キッチンへ戻ろうとすると、 「おい。」 「え?」 後ろから声をかけられてドクンとする。 「コレ、ありがと。」 昨晩かけてあげた上掛けを持ち上げて、蓮ちゃんは笑った。 その笑顔にホッとしてドキッとしてズキリとする。 「どういたしまして。」 そんな顔して笑わないで欲しい・・・と思いながら、 オレもぎこちなく笑い返した。 後ろめたいオレは慌てて背を向けて、唇をキュッとする。 お礼を言われるような立場じゃない自分には その笑顔は複雑すぎて、 朝からまた、頭ん中がグルグルした。 気づかれていない自分の気持ちは、 もはや気づかれなくて良いことなのかがわからない。 ってなことを考えてる、もはや自分がわけわかんない。 普通でいたいと言いながら、 自分を押さえておくのになんだか限界だ。 寝てる蓮ちゃんに勝手に触れてしまうなんてこと、 やっぱりするもんじゃない。 頭をポリポリっとかきながら立ち上がって、 背伸びをする蓮ちゃんが歩き出すと、 どうしても視線が勝手に追ってしまう。 シャツのボタンを外しながら歩く蓮ちゃんにドキリとして、 思わず唇をなめる。 「じゃ、行ってくるわ。」 「っ・・ん。」 ぼさぼさ頭の寝起きの蓮ちゃんの笑顔の破壊力を、 当の本人はあまりにもわかっていなさすぎだ。 パタンと扉が閉まると小さく息を吐く。 あんなこと、ホントにしなきゃよかったって いまさら後悔した。

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