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第28話

そうして蓮ちゃんがいうように、 なぜだかとても懐かしさを感じると、自然と笑顔になった。 結婚とは・・・というより、結婚式とは。 幸せの象徴なのは確実に否めない。 だっていくつも来た写真に写ってるすべての人が、 どう見ても幸せそうに見えるから。 結婚に縁のないオレだって楽しかった。 「こうやってみると結婚って良いモノだよね。」 「結婚式が良いモノなんだろ。」 その言葉に、 同じことを想っているのかなと思えて、オレはとても嬉しくなった。 無意識に 蓮ちゃんが映ってる写真ばかりを探して、 自分と並んでいる写真を見つけるたび、顔がにやけた。 しばらく二人して昨日のことを話して和むと、 そのまま携帯をテーブルに置く。 そして缶ビールに手が伸びるとほとんど同時に携帯が震えた。 ・・・オレのだけ。 なぜだか人はときどき、 見えないハズの未来を感じることが出来る。 こんなオレでも。 無言で携帯を持ち上げて画面を見ればそれはもちろん、 彼女からのメッセージだった。 そうしてオレは少しも迷わず携帯の画面を下にして テーブルの上に置いた。 メッセージを無視したとわかるだろうに、 蓮ちゃんはなにも言わない。 なんだか一気に現実に引き戻されてしまって、 飲みかけの缶に手を伸ばしてビールを飲む。 ああもう面倒だ・・・とオレのすべてが言っている。 こんなことからほつれは始まって、 そのほつれはあっという間に広がって収拾がつかなくなるとわかっている。 それでももう、 蓮ちゃんのほっぺの柔らかさを知ってしまったいま、 あんな風に言い合いをしてしまったいま、 作り笑いと下手な言い訳をすることどころか、 送られてきたメッセージを見ることすらも面倒だった。 明日にはどうせ会社で顔を合わせる。 面倒なことを後回しにするのはオレの悪い癖だと思いながらも、 煩わしいすべてを忘れるように、ビールを流し込んだ。 ☆ その日、めずらしく蓮ちゃんは、 夕方の4時ごろまでココにいた。 彼女は大丈夫?とは聞かないオレは、 蓮ちゃんの携帯が震えて、 そのたびそれを無視する蓮ちゃんを、見て見ぬふりをする。 昨日、あんなことをしちゃった後で なんてことない時間を二人で過ごせる幸せを味わいながら、 「そろそろ行くわ」と言って立ち上がる、 スエット姿の蓮ちゃんに、ジーパンとシャツを貸してやった。 いつも通り、玄関先まで見送るつもりのないオレはリビングで、 引き出物が入った紙袋に、すでに用意してあったスーツを入れて持たせると、 蓮ちゃんはなぜだかこちらをじっと見る。

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