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第31話
過去、いままでにもこの彼女だけでなく、
もう何度も同じような事を言われてきた経験がある。
そして・・・
「ん。また今度ね。」
オレは毎回、
彼女たちから視線をそらして同じ言葉を繰り返す。
だってオレは、
これまでもいまもこれからも・・・
蓮ちゃんを合わせるつもりなんて毛頭ないから。
「瑞樹くんの親友は結婚、考えてないのかな?」
「え?」
世間的には親友枠になる蓮ちゃんのことを、
彼女と話すのはもちろん、好きじゃない。
オレの、蓮ちゃんへの歪んだ好きって気持ちが、
この子にバレちゃったら困るから。
もちろん、
蓮ちゃんの結婚の話しなんて・・・ありえない。
「そろそろ行こっか。明日も仕事だし。」
これ以上、
結婚の話しも蓮ちゃんの話しもしたくなくて立ち上がる。
実際、もう遅い時間だった。
明日も仕事があってくれてよかった・・なんてことを思った。
☆
家に着くなり缶ビールを開けると一気に飲み干した。
ああもう面倒・・・と、昨日も想ったことをまた思う。
そうして、だったら止めればいいだけなのに・・・とも思う。
それでもやっぱり、
自分から彼女に別れ話を切り出すなんて出来るとは思えない。
オレって本当にイヤな人間だって思う。
背広を脱いでシャツの袖をまくると、パソコンを開いた。
蓮ちゃんがダメでも、
ほかにそういう意味で付き合える男を探してみようか・・なんてこと、
これまでにもう何度だって思ってきた。
いまの時代、
「男同士」とでもググってみれば、
あっという間にそんな写真やらサイトやらがポンポン出てくる。
オレが難しいと思う世界を、
いとも簡単にやってのけてるように見える男どもを、
どこかうらやましく見つめた。
こうやって見てると、
勇気さえあれば出会いの場はいくらでもあるんだなってわかる。
ぶっちゃけ興味はある。
蓮ちゃんを好きだと意識してからずっと、
男と付き合うこと・・・つまり、男とスるってことには、興味しかない。
でも自分はなんというか、そういう意味で男と出会いたいわけじゃない。
キレイゴトに聞こえるかもしれないけれど、
可能性のない相手を・・・蓮ちゃんを想う気持ちを・・・
いいかげんどうにかちゃんと、
整理をつけたいってだけ。
女の子とだって付き合えてる自分は、
ただ、オレが好きで、オレを好きになってくれる人が欲しいだけ。
そしてオレの場合、その相手は男なのかもしれないって思うだけ。
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