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第32話
でもきっと、こういう場所で出会ってしまったら、
身体の関係だけが先行してしまいそうでなんだかそれはちょっと違う。
それでもこういったページを見てしまう理由はもちろん、
男とスるってことには興味ばかりがあるからだ。
そしてもうひとつ・・・
もしかしたら、いままで自分がずっと隠してきたことを、
蓮ちゃんへの気持ちを・・・
否定せず、話せる人が出来るかもしれないってことに、
すごく惹かれてるってことだ。
誰にも話したことのない、
男のくせに男を好きな自分を
笑って赦してもらえたら・・・
自分はなにかが変わったりするのかなって
希望を感じてしまう。
周りの友達が結婚していって、
遠くない未来のいつかに蓮ちゃんだって結婚する。
その現実がやってきたとき、
蓮ちゃんの幸せを、出来ることなら祝福したい。
あんな風に寝てる蓮ちゃんのほっぺにキスをしてしまう自分は、
なにかきっかけがあったら・・と思わずにはいられない。
パソコンを閉じるともう一口、ビールを飲む。
普通が大切なオレが、
いつか自分からその普通を手離すことが出来るだろうか。
叶えられそうもない希望だけがグルグルとしてる・・・
「よぅ。」
その週の金曜日。
秋の夜風が冷たい玄関先に。
今夜も蓮ちゃんはイケ散らかしたスーツ姿で
約束もなしにやってくる。
コンビニ袋をぶら下げて。
今カノにもらった靴を履いて。
元カノにもらったネクタイをして。
「ん。」
いつものように何とも言えないオトを発する。
「さみぃ。」
コンビニのビニール袋をオレに手渡されて、瞬間、
蓮ちゃんの冷たい手が触れた。
「いい加減エコバックのひとつくらい持ったら?」
「杏野いくつ持ってる?」
「ニつ。」
「いっこちょうだい。」
「ヤだよ。」
その日は
靴を脱いでる蓮ちゃんを玄関に置いてけぼりにして、
先に部屋に向かった。
☆
蓮ちゃんのほっぺにキスをして、
いまの自分をどうにかしたいと思いなながらも何もできずに、
あっという間に冬のはじまりがはじまる。
二人で気まずくうどんを食べたあの日以来、
オレは家に帰ると早々にパソコンを開いて、
男同士のそういった類のページを徘徊する頻度が増えてしまった。
そうして、彼女と会う頻度が明らかに減っている。
昨日も仕事帰りに食事に行こうといわれていたのを、
疲れているなどとうやむやに返事をして断ってしまった。
彼女との終わりが近いなと思う。
いつか蓮ちゃんが言っていたとき
今カノとは既に7か月以上はたっていたらしいのだから、
今回はオレにしてはずいぶん長く持った方だ。
それでも、
好きでもない彼女に自分から別れ話すら出来ないオレは、
いま出来ることはそのときを待つことだけ。
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