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第33話
明日は金曜日。
きっと蓮ちゃんはいつも通りやってくるだろう。
早く会いたい。
会ったところで何も変わらないことはよくわかってる。
それでも会いたい。
いくら報われないとわかっていても、
蓮ちゃんを好きって気持ちは無くならないし止められない。
明日会えることを楽しみにしていることは紛れもない事実だ。
☆
「これ。」
「ん?」
12月に入って最初の金曜の夜。
ネクタイを緩めながら蓮ちゃんはオレに紙袋を渡す。
「なに?」
外したネクタイを適当にソファに置いて背広を脱ぐ蓮ちゃんは、
聞いても返事をしない。
一度、受け取ったその紙袋をテーブルに置くと、
先に背広とネクタイと、今日はコートも一緒にいつもの場所にかけた。
「なんなの?」
きっと蓮ちゃんは返事をしないと思いながら、
もう一度そう言って紙袋をあけるとそこにはグラスが一つ、入っていた。
「グラス?」
取り出して、テーブルの上に出す。
よく見るとそのグラスにはオレのイニシャルが入っていた。
「誕生日プレゼント。」
確かに毎年、オレたちはお互い、
誕生日だけはプレゼントを渡している。
それはなぜか、通う学校が変わった高校生の時から続いていて、
去年はネクタイをもらった。
「来週末、彼女と旅行に行く。」
「・・へぇ。」
本当ならどこに行くの?とでも聞くべきだろうけど、
そんなことはぶっちゃけどうだっていい。
来週の週末にやってくる
オレの誕生日を待たずに今日、
プレゼントをくれた意味を理解したからだ。
それは
来週の金曜に
蓮ちゃんはココにはやってこないってことだった。
「来週旅行ってことは、クリスマスは予約が取れなかった?」
落ち込んでることを悟られないように話題を振った。
「クリスマスは家で過ごしたいんだって。」
「そっか。」
本当は知りたくもないそんなことに、笑顔で言った。
「杏野は?どっか行くとか予定してんの?」
「クリスマス?」
「ってかお前の誕生日。」
言い直されてトクンとする。
ビールの缶を開けると、
もう開けてた蓮ちゃんの手元の缶にコツンと当ててから一口飲んだ。
「ん~オレはどうだろ。」
「なに?」
「最近、彼女とあんま上手くいってない。」
「へぇ」
たいして興味ないって顔をするその顔が好きだなと思う。
「まぁお前にしてはもった方だもんな。」
「蓮ちゃんには言われたくないんだけど。」
「俺はまだもってる。」
「オレだってまだ別れてません~」
そんなどうでもいいことになぜムキになるのか・・・
「蓮ちゃんはうまくいってるんだね・・・」
言いたくないと思ったときにはもう、言葉にしてしまっていた。
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