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第41話

☆ 何事もなかったようにしていても、もう十分、何事もあったその日の夜、 オレは彼女の家に行って彼女を抱いた。 でも適当な理由をつけて彼女の家には泊まらなかった。 家に着くなりパソコンを開く。 彼女をとっかえひっかえしていても浮気をしたことは一度もないし、 いまもこれから先もそんなことをするつもりはない。 彼女とのことはいますぐ何もできないけど、 でも別れたら・・・ オレはそういう意味で、男に会いに行ってみようと思う。 それがいつになるのか、 はたまたそうなったときにそんな勇気が出るかは正直、 わからないけれど。 いい加減、限界なのだとオレのナカのナニカが言っているから・・・ ☆ この部屋に蓮ちゃんが来ない金曜日の朝。 今朝は雪が降りそうなくらい寒い朝だった。 なんとなく今週は時間の流れが遅くて週末までが長かった。 来週も、そしてきっと年末も蓮ちゃんには会えないから、 ここからがまた、時間が経つのが長く感じるかもしれない。 炊飯器を開けると、 炊き立てご飯のおいしそうなにおいに包まれた。 平日はほとんどの場合、朝からちゃんとご飯を炊く。 炊き立ての白いご飯ってどこか、幸せの象徴って感じがする。 たった独りで食べているとしても。 蓮ちゃんがいる土曜の朝も、 ときどきはご飯と魚を焼いたりだってするけど、 ほとんど大量に酒を飲んだ翌朝だから、雑炊やうどんが多くなるのも事実だ。 「さむ・・・」 コートを羽織って外に出ると、 思わず独りごとを言ってしまうくらいに寒い。 太陽が明るくても空気は痛くて、 思わず顔がこわばるけど、実は冬は好きだったりする。 まず、コートが好き。 ブーツも好き。 そしてなんとなく、世界から音が消えた感じが好き。 独りの時間は決して嫌いではないのだ。 そうやって、 蓮ちゃんがいなくても自分はちゃんと幸せを感じられるってことを 改めて感じながら、会社に向かった。 昼休みに携帯を見れば、 彼女からメッセージが来ていた。 自分の誕生日である日曜に、行きたい場所があるらしい。 なにかサプライズでも考えてくれているのだろうか。 なんにしても、 別段、彼女としたいことがあるわけでもないオレは 「彼女のお願い」を断ることは滅多にない。 それは「いままでのすべての彼女」って意味で。 蓮ちゃん絡み以外はほとんどなんでも、いいよって言う。 だからいつものように「OK」のスタンプを返すと すぐに既読になった。 ―親友によろしく― 今晩は蓮ちゃんが部屋に来ないことを彼女は知らなくて、 知らせるつもりもない。 既読にしてそのまま、返事は返さなかった。

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