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第46話
「オレ、蓮ちゃんを友達だなんて思ってないんだよ。」
誤解されるな・・と思いながらも、
いきなり好きだなんて言えなくてそんな言い方になった。
そうして言ったとたん、
それは冷たく聞こえたかなとか、
もっと違う言い方があったかもしれない・・なんてことも思った。
でも嘘ではない。
オレはもうずっと、
蓮ちゃんを友達だなんて思ってきていないんだ・・・
「俺もそうかも。」
は?・・・と思った。
思ったけど声が出なかった。
「俺も杏野を友達って思っていないかも。」
そんなことを言われると思っていなかった自分は声が出ない。
せわしなく瞼が動く。
ではいったい、オレは何なのだろう?
どう思われているのだろう?
声が出ないまま蓮ちゃんを見れば、
その視線はなぜだか下を向いていて、オレたちはしばらく目が合わなかった。
「俺は杏野が気になる。」
気になる・・・
気になるとは?
気になるとはなんだろう。
「俺もお前も付き合ってるヤツがいて、そんなことはもう昔から分かってる。
わかっていてそれでも俺は杏野が気になる。
気になってどうしても、俺はココに来てしまう。」
決してまくしたてるようではなく、
けれどもどこか早口で、透き通った声でそう言ってオレを見た。
その瞳にドキリとして、落ち着け落ち着け・・・と心で思った。
だって明らかに都合よく勘違いしそうになっているから。
「俺ばかりがここに来て、
俺ばかりが会いたがってることもわかってる。」
心臓がバクバクしてる。
頭ん中で「もしかして」って言葉が回る。
もしかして・・・・・
もしかしたら蓮ちゃん『も』・・・
いやいや・・落ち着かなくちゃいけない。
中学2年。
先に彼女が出来たのは間違いなく蓮ちゃんだ。
オレの記憶のあちらこちらに、
蓮ちゃんがとても幸せそうに彼女に笑いかけてるシーンを知っている。
蓮ちゃんは女が好き・・・と、
まるで言い聞かせるように頭ん中でつぶやいて、ゴクリと唾を飲んだ。
「オレも蓮ちゃんが気になる。」
言いながらも蓮ちゃんを見れない。
「気になるから会いに行けないの。」
すぅっと息を吸った。
蓮ちゃんを見れば、蓮ちゃんもこちらを見ていた。
「・・・蓮ちゃんが先に彼女を作ったんだよ。」
・・・また。
きっと誤解させるような言い方になってしまった。
責めるつもりなんて全くないはずなのに、
なぜかこんな言い方になる。
全身がドクドクしてる。
でもすごく冷静だった。
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