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第48話
コート越しに感じるその存在と、
いつもの蓮ちゃんの香りに強く包まれてクラクラ・・・
意識がどうにかなっちゃいそうで、深く息を吸って吐いた。
27年も生きてきたのに
こんなに全身がバクバクしたのははじめてだ。
息が震える。
倒れそうな緊張感に、大きく深呼吸をした。
「イヤだったら逃げて。」
蓮ちゃんの声が耳元辺りで低く響く。
逃げるだなんてそんなこと・・・そんな言葉にびっくりする。
蓮ちゃんは全然わかっていないのだなと思う。
蓮ちゃんの「たぶん」の意味が分かった気がした。
「蓮ちゃん・・・自分がなにしてるかわかってる?」
「・・・たぶん。」
また、「たぶん」だ。
蓮ちゃんはきっとわかっていない。
こんなことをしちゃってる意味。
オレの好きの意味や
オレも蓮ちゃんも男だということ・・・
「たぶんだなんてそんなの、ホントはわかってないんじゃない?」
「どうだろ・・・」
たぶんという言葉にビクビクしながら、
それでもオレは蓮ちゃんの背中に腕を伸ばした。
「オレはたぶんじゃないよ。」
「ん・・」
「オレのはたぶんじゃない。」
知らずに息を吐くと自然と瞼が閉じる。
よく知ってるはずの蓮ちゃんの、
まったく知らないぬくもりを感じながら、
オレは蓮ちゃんに身体を預ける。
蓮ちゃんは力強くオレをぎゅうっとした。
「恋愛なのかな?」
と。まるで独り言みたいに蓮ちゃんが言う。
これは恋愛なのかなって。
「そんなの知るわけない。」
あったかい体温を感じながら、蓮ちゃんの「たぶん」を考える。
恋愛のソレだったらいいと思わずにはいられない。
でもそれは、二人にとってはずいぶんと怖いことでもある。
周りと違ってしまうことのすべては、ただ、恐怖だ。
すると突然、蓮ちゃんの携帯が震えてオレは全身でビクリと反応した。
反射的に離れようとして瞬間、蓮ちゃんの腕がそれを許さなかった。
力強さにドキっとして、
きっと彼女からであろうそのバイブ音に恐怖を感じながら息を吐く。
「ギリギリ」だと思った。二人とも。
そして、そこは一度超えたら戻れない・・・
苦しいのに救われる・・・
そんな場所にいま、二人で立っているんだって感じた。
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