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第61話
うわ・・って感じ。
こんなことをサラリというのかこの男は。
「でも・・だって、準備がいるでしょ。男同士だよ。」
オレがなにを想うのかを察したみたいに、
今度は蓮ちゃんが息を吐く。
「こういうことは大事なことだよな。」
そう。ちゃんと話さなきゃいけない。
オレたちは男同士だから。
「だよね。」
「杏野・・」
蓮ちゃんの言う「杏野」に、オレはひどくドクンとする。
「俺はすごく杏野に・・・
杏野のぜんぶに触ってみたいって思ってる。」
それはケツのアナもって意味で・・・と言われて力が抜けた。
「突っ込むとか一旦横に置いといて。
純粋に杏野の全部に触りたい。」
きっともう、これ以上の告白はないだろう。
好きだっていうのよりずっと全身に響く。
オレに・・・男のオレに触りたいだなんて・・・
「ん。わかった。」
だからもう覚悟するしかない。
ダメになったとしたって、それでも。
「俺だってこえぇけどね。」
「ん。でもきっと『たぶん』ね。」
まるで蓮ちゃんの真似をすると蓮ちゃんが笑う。
そうしてまったく同じ熱量で、
互いに互いをぎゅうっとした。
☆
「平気か?」
「平気じゃない。」
結局、先に蓮ちゃんが先にシャワーを浴びて、
そうして次に、オレがシャワーを浴びた。
いま、自分のベッドの上に二人、
ちゃんとスエットを着て並んで、
自分がぐらぐら揺れているのがわかる。
そうして、それはおそらく蓮ちゃんも。
だってここからはもう誤魔化せないから。
こんな・・・普通じゃないこと。
認めちゃったら・・・
普通じゃないって認めることは、二人ともすごく怖いから。
だからもう本心を言った。
ぜんぜん、兵器なんかじゃなかった。
「まぁ、リラックスしろ。」
「簡単に言わないでよ。」
「簡単には言ってねーよ。」
結局どうするか迷ったオレたちは、
はじめての今日、
まずは突っ込まれる方をじゃんけん決めようってなことになった。
勝った方が突っ込まれるってことになってこんなときだけ・・・
めずらしくオレが勝ってしまった。
いつもは蓮ちゃんの方がじゃんけんが強いのに。
でも正直、これで良かったと思ってる。
だってオレは、どうにも蓮ちゃんに突っ込む気にはなれないから。
これはなるべくしてなったんだって思ってる。
だからさっき、
勇気をもって、独り、その処理をした。
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