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第71話

蓮ちゃんがオレの隣に寝転ぶと、 自然と身体はそっちを向いた。 身体はどこも動かしたくはなかったはずなのに。 蓮ちゃんが頭を引き寄せて、 おでこをくっつけあうとなぜだか笑う。 「なんとかなったね。」 「ん。嬉しい。」 「オレも・・・」 身体を引き寄せあいながら、 こんなに嬉しいセックスは初めてだって思った。 身体中が痛くても。 ソコがいまだに異物感でおかしくても。 オレはただ、嬉しい。 数分前のこのベッドの上でオレと蓮ちゃんは、 二人の人生においてもっとも激しくて狂おしいセックスをした。 少なくとも二人にとって、宇宙一の唯一無二のモノだった。 甘い言葉なんてほとんどなくて、 ただお互いの荒い息と漏れる息と オレのあられもない喘ぐ声だけが響いてた。 でもそれで十分だった。 気持ちは通い合ってたから。 きっとそれが・・・それだけが大事なんだろう。 全身の体液が泡立って、 挿れ込まれるたび苦 しくて、 引き抜かれるたび気持ちが良くて、 それを繰り返されていけばだんだん、 自分の意識は気持ちがいいだけを追いかけはじめた。 オレはしっかりソコで感じることが出来た。 蓮ちゃんの見えないモノ。 想いとか情熱とか・・・愛とか。 そういうすべてを感じられたって思った。 本当は自分がされるすべてを覚えておきたかったけれど、 ヤってる最中はとてもじゃないけど、 そんなことを思う余裕すらなかった。 行為の全てが、 声が、 とりまく空気が、 なんていうかもう・・・すごかったから。 「このまま寝ていいよな。」 「え?」 「このベッドで寝るの、初めて。」 オレはパチパチと瞬きをした。 思わず笑顔で蓮ちゃんを抱きしめると、 蓮ちゃんもオレを抱きしめる。 一応、ダブルベッドだけれど、 大の男が2人寝るにはけっこう狭い。 でも狭くたっていいんだ。 これからのオレは もう蓮ちゃんのために、 きっと、あの布団を敷かないのだ。 互いに何も言わなくても 唇が重なる。 すると 蓮ちゃんのおなかがぐぅっと鳴った。 「・・そういえばなんも食べてないね。」 「そうだった。」 本当はもう少し、 この気だるさの中に居たいような気もしたけれど・・・ 友達としてではなくて、 初めて過ごす二人のクリスマスのために、 やっと身体を起こす決意をした。

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