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第77話
「杏野のカラダってなんでそんなエロいの?」
「っ・・・蓮ちゃんがそうしたんだろ」
本来、出口である場所が、いまでは入り口と化しているのは、
それはもう間違いなく蓮ちゃんの仕業なのだ。
「そういうの。わかってて言ってんの?」
っなにが?・・・と言おうとして、
蓮ちゃんが明らかにいままでと違う顔つきになっているから、
ドクンとして息を飲む。
「バングル毎日しとけよ。」
わかりやすいのかにくいのか、
よくわからない独占欲丸を出しにしてなんだか可愛いことを言うから、
「そんなことをしなくてもオレはずっともう四六時中、蓮ちゃんに縛られているんだよ」
・・・と返事をするよりも前に、
その態勢のまま一 気に蓮ちゃんが挿いってきた。
「んぅう・・っーー・・・・・」
可愛い言葉とは裏腹に、
その刺激の強さに一瞬、呼吸が止まる。
そのまま薄い粘膜が擦られて、
入口からオク深くまで蓮ちゃんで埋め尽くされると
「はぁっあ、あっ、っぁうっ、んぅ、っ・・っぅあああ・・・」
オレはそれまで以上にあられもない声を出しまくって
もうなにも考えられない。
・・・気持ちよすぎておかしくなる・・・
と思ったのを最後に、
もうあとはただただ、
自分のカラダを大好きな男に好き勝手にされるのだ・・・・・
☆
秋の夜長の金曜日。
チラリと時計を見ればもうすぐ9時になる。
「お疲れ~。」
「お疲れ様。」
今日も相変わらず蓮ちゃんはこの部屋にやってくる。
オレのエコバックをぶら下げて。
オレがあげた靴を履いて。
オレがあげたネクタイをして。
今日もスーツ姿が似合ってる。
けれども一年が過ぎるのが本当にあっという間で、
そろそろ薄手のコートが必要だ。
「はい。」
「え?どうしたの?」
渡してきたのはきっとケーキだ。
そのわかりやすい白い箱と甘い香りはオレを笑顔にして、
中身を見なくてもこの部屋を甘い香りで包んでしまった。
「今日、残業だって言ってたから。」
「え~なにその理由。意味わかんな~い。」
と言いながら、明らかにテンションが上がった。
だって、
何でもない日にケーキを食べれるってのを幸せって言うからだ。
それも蓮ちゃんと二人で。
太っちゃうな~などと言いながら
「ありがと。」
お礼を言った。
「ココの店、有名らしいぞ。」
「へぇ・・」
視線がこっちを向かない蓮ちゃんは、
まるでちょっとついでに寄ってきただけって顔をしてるけど、
きっとこの店のことをちゃんと調べて買ってきたに違いない。
そういうイチイチを言わないのだ。この男は。
10年どころではない長い時間、
付き合いのある蓮ちゃんのことを、
オレは以外にも知らないことだらけだ。
でもまぁそれは当然で、
まさかこんな関係になるとは露ほども思っていなかった過去の自分は、
蓮ちゃんのことを詳しく知ることを避けてきたから。
抱き合うような関係になってから、
たくさんの蓮ちゃんを知る。
そしてそれは、
蓮ちゃんのそばにいることになにも影響はない。
どんな蓮ちゃんでも
本当にすべてが好きって想いに繋がるから。
知らない蓮ちゃんを知るたび、
ますます好きが増えていく。
それはベッドの上の蓮ちゃんも含めて・・・だ。
「ってか残業してきた?」
明らかに風呂上がりだとわかる格好をしてるオレに、
蓮ちゃんは眉を顰めた。
「実はなくなった。」
「なんだそれ。」
オレが笑うと蓮ちゃんも笑う。
そして、
ああ違った、ケーキはどっちだってよくて、
これこそが幸せってことだった
なんてことを思った。
「お風呂先入る?」
「ん~じゃあそうすっかな~」
言いながら相変わらず、
蓮ちゃんは無防備にネクタイを緩める。
そうしてオレは相変わらずそれにドキリとする。
なんともいえない気分にさせるその姿を、
今日もやっぱりバレないように見つめた。
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