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体操服
「きもちよかったあ…」
体が崩れ落ちるようにして、直生は座席にドカッと座った。
「そりゃあ、よかった」
思わぬ満足感を得た総治郎も、直生と同様に座席に身を預けた。
「ねえ、総治郎さん。私たち、体の相性がいいんですね、きっと」
衣服が乱れたままの直生が、ぴったりと体を寄せてきた。
「さあ?うーん、そうかな?」
出したばかりだというのに、まだ火照りが鎮まない。
「だって私、総治郎さんが初めてなのに、ものすごく気持ちよかったんですもの…」
直生が惚けた様子で語り出す。
「きみ、初めてだったのか⁈」
総治郎は驚いた。
通常、経験が無いなら、挿入するときに痛みを伴うものと考えていた総治郎にとっては、意外な告白だった。
「やっぱり、初めてなのにあんなに感じるなんて、ヘンなんでしょうか?」
直生が気まずそうに返してきた。
「いや、わからん。その、オメガとしたことはほとんどないんだ。だから、なんとも言えない」
「そうなんですか。その…総治郎さんは…あー、あの、ご経験は何人ほど?」
直生が小声になる。
さすがに、夫の過去の相手を詮索するのは気が引けるらしい。
「すまんが、覚えてない。だが、大半はアルファかベータだったことは確かだ。オメガはひとりだけだな」
「全員、女性ですか?」
「いや、男もいたよ」
ほんのり気まずい気持ちになった総治郎は、そういえば、アダルト動画でこんなのがよくあったな、などとぼんやり考えた。
「総治郎さんは、こういうことがしたいとか、希望はないんですか?次、別なことしてみません?」
総治郎の気持ちを察したのか、単純に話を進めたかったのか、直生が別な話題を振ってきた。
言われて総治郎は、先ほど見たカタログに載っていた衣装を思い出した。
「そうだな、アレ着てくれないか?」
「アレ?」
「とりあえず、一緒に向こうに行こう」
総治郎が言って、2人はベッドルームに移動した。
「総治郎さんったら…こんな趣味があったんですね……」
別の衣装に着替えた直生は、ベッドの上で脚をもじもじと擦り合わせた。
直生の言葉は、字面にすると批難しているように聞こえるが、どこかまんざらでもない態度で総治郎の顔色をチラチラと伺っている。
直生がいま着ているのは、学生が着るような体操服だった。
もっとも、最近の子が着るようなデザインではない。
上はトレーニングシャツ、上はブルマという、昔ながらの体操服である。
自前の靴下が黒のハイソックスだから、ますます生々しい。
ブルマと靴下の間の、剥き出しになった脚がなんとも扇情的だ。
直生は、黒い靴下や下着なんかを身につけると、その肌の白さが顕著になる。
普段あまり露出しない脚は、陽に晒すことが滅多にないだけに、他の部位よりも飛び抜けて白い。
この白い脚にキスしてやると、締めつけがキツくなることがあるから、感じやすい部分なのかもしれない。
さらに最近気づいたことだが、直生は色っぽい衣装を「着ること」ではなく、「着させられること」に興奮を覚えるらしい。
今だって、期待を込めたような眼差しで総治郎を見つめている。
おそらく、暗におねだりしているのだろう。
「まあ、俺が学生のときは、女の子はみんなこんなだったからな…」
総治郎は誤魔化すやさようなセリフを吐くと、直生を組み敷くようにして覆い被さった。
「あの、総治郎さんのこと「先生」って呼んでみましょうか?」
直生が蠱惑的な笑みを浮かべて、総治郎の首に手を回した。
「なんだそりゃ。まあ、いいとも。きみの好きにしなさい。このままするぞ」
「うふふ。じゃあ、そうさせて貰いますね、せんせい?んっ…」
総治郎は、クスクス笑う直生の口を塞いだ。
「んッ…んん、ちゅっ」
総治郎のキスに応えるように、直生も唇をすぼめたり、舌を出し入れした。
「はあ、なおき…」
唇を離すと、総治郎は熱い息を吐いた。
すると、どうしたことだろう、先ほど射精したばかりなのに、また体が昂ってきた。
直生のフェロモンの余韻が残っているのかもしれない。
「あん、せんせえ…」
トレーニングシャツの上から乳首をなぞってやると、直生の華奢な体がピクリと跳ねた。
「ここが好きなのか?」
「はいっ、だいすきッ、あっ、そんな触り方はダメえ…」
シャツの上から撫でたり、優しく掻いたりすると、直生は脚をもぞもぞ動かして喘いだ。
「もう、ここがこんなになってるな」
ブルマ越しに直生の中心に触れると、そこはもうすでに熱を持ち、湿り気を帯びていた。
「あん、だめえ…」
総治郎がブルマのウエストに手をかけて引っ張り下げると、直生が甘い声で鳴いた。
「ははは、まるで漏らしたみたいだな」
ブルマの下はしとどに濡れていて、その光景に、総治郎は思わず舌なめずりをした。
早く、直生の中で暴れたい。
めちゃくちゃにしてやりたい。
なぜだろうか。
普段は直生を大事にしたい、負担をかけたくない、乱暴にはしたくないと思うのに、いざこうして抱こうとすると、サディスティックな気持ちが頭をもたげてくる。
ブルマもその下に履いていた下着もすべて取っ払うと、総治郎はさっき履き直したズボンをまたずり下げて、男根を露わにした。
総治郎の男根はすっかりいきり勃ち、涎まで垂らしている。
「せんせい、早くう…」
下半身を晒した直生が、「早くきて」とばかりに脚を開いた。
「わかってる」
直生の両足首を掴むと、胎内に男根を侵入させていく。
すると、ようやく来たかとばかりに、直生の子宮が男根を迎え入れた。
「あっ、せんせえ、すごい、いいっ、ああっ、そこお…」
「俺もいいぞ、すごくいいっ!」
直生の胎内に男根を擦り付けるように、ゆっくりゆっくり腰を前後させると、より強い快楽が押し寄せてきて、動くのをやめられない。
「あ、すき、そこ、すっごく好きいっ!」
「ああ、よくわかる。ぎゅうぎゅうに締まってるぞ」
ひょっとしたら、このまま千切られるかもしれない。
総治郎は、そんな物騒な上に非現実的なことを考えた。
でも、こんなにかわいい番になら、そんなふうにされるのも悪くはない。
フェロモンの影響で、頭が上手く回らずバカになっているのだろうか。
「もう、でるう!」
「俺もだ、ナカに出すぞ」
「だしてえ、いっぱいだしてえ!」
直生に懇願されるまま、総治郎は子宮内めがけて熱い子種を放った。
「ああ、すごかったあ…」
直生が切なげにため息を吐くと、シーツの上にばたりと寝転んだ。
寝転んだと同時に、ふーっと大きなため息を吐いて、額や頬に広がった汗を拭った。
「総治郎さん、私、シャワー浴びてきますね。もう、体中びしょびしょだし」
「わかった。それは脱ぎなさい、片付けといてやる」
総治郎に指示されるまま、直生はトレーニングシャツとブルマ、下着、靴下を脱いで、生まれたままの姿になった。
「じゃあ、先にお湯貰いますね」
言うと直生は、シャワールームに消えていった。
「ああ」
直生の背中を見送った後、総治郎はふと、このホテルを紹介してくれた経営者のことを思い出した。
ベータだてらに数百件ものホテルを経営する会社社長で、間中の紹介を通じて知り合った男だった。
名前は確か半田 といった。
彼と出会ったのは、数年前に催された経営者同士の交流会。
当時、彼はまだ30代の若い男で、そのとき総治郎は、会長になってしばらく経ったときのことだった。
「あ…成上さん、はじめまして」
半田はためらいがちに、総治郎に挨拶した。
自分より立場の高い相手を前に、緊張しているのだろう。
「はじめまして、半田くん、だったかな?」
総治郎は懐から名刺を出した。
半田はそれを受け取ると、スムーズに胸ポケットに入れた。
「はい、半田です。今後とも、よろしくお願いします」
半田も同じように、名刺を取り出した。
総治郎も半田と同じように名刺を受け取って、胸ポケットに入れる。
「半田くん、成上さんに"お近づきのしるし"は渡さないのかい?」
総治郎と半田のやりとりを見ていた間中が、クスクス笑いながらやって来た。
「え…いや…」
半田は苦笑いとも、困っているともいったような、なんともいえない顔で間中を見た。
「安心なさい。成上さんは"アレ”を渡したところで、憤慨するような人じゃないから」
間中が、生徒の扱いに慣れた中年教師のように穏やかに、半田の肩に優しく触れた。
総治郎が、いったいどういうことだろうと疑問符を浮かべていると、半田は懐に手を入れてゴソゴソ動かしてから、白い長型4号の封筒を取り出した。
「それは?」
「あー…えっと、私が経営しているホテルの無料券です」
半田はためらいがちに答えた。
半田が経営しているホテルというのは、ラブホテルのことである。
なるほど、ある程度気の知れた相手なら、こんなプレゼントでも笑って喜ばれるだろうが、初対面で立場がはるか上の相手となると、ためらいが生まれるわけだ。
半田の態度が、遠慮がちなのは、そういうことなのだ。
「ありがとう、半田くん。ありがたくいただくよ」
そんな半田の態度に、総治郎はなんだか懐かしい気分になった。
自分も企業したばかりのときは、目上の相手に対してこんな調子だった。
「こんな商売してるような私ですが、よろしくお願いします」
謙虚なような、自虐的なような口ぶりで、半田は改めて総治郎に挨拶した。
「半田くん、どんな商売であっても、成功させたのだから、立派なことじゃないか。誇るべきだよ」
総治郎が笑いかけると、半田は教諭に褒められた園児のように、照れ臭そうに「ふふ」と微笑んだ。
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