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星空の下での決意⑩

「花井さんは凄いね」 「凄いだなんて、これから資格とらなきゃいけないし、就けるかも分からないから。渉太くんこそもう内定もらってるんでしょ?安泰じゃない」 「安泰でも、花井さんのように明確な目標ないからさ」  内定が決まったと言っても一番就きたい会社かと言えば考え込んでしまうほど、一般的な企業に就いて働ければいいと思っていたけど、恋人の姿を見たら本当にそれでいいかも定かではない。そんな自分が律仁さんに着いて行ったところで何が出来るんだろうか。 「渉太くんはいいなー。有名人ともなれば演技もできるし、ハリウッドとか?でも最近の律は曲も英語の詞が多いからさ、意識してる感じはするよね」  眉を顰めて真剣に考えていると、花井さんが背伸びをしながら問うてきた。 「へ?花井さんって律の曲に詳しかったっけ……」 「あれから少し興味湧いて、渉太くんに内緒で曲、聴いてるんだよね。その話、彼氏のことでしょ?」  肩を竦めて照れたように笑みを浮かべる。あれからと聞いて、彼が律の姿でバイト先へと来た時のことだと直ぐに分かった。何がきっかけであれ、身近な人が律に興味を示してくれるのは純粋に嬉しい反面、海外の話が律仁さんのことだと勘繰られてドキッとした。 「それは……。いくら花井さんでも俺から言えないです……」  律仁さんの事だから、本気で行動に移すつもりでいるのだろうけど、確定した話ではない。相談しておいて虫がいい話ではあるが、本人が公表しているわけではないので花井さんとはいえ、話すのを躊躇った。 「そうだよね。勝手に詮索してごめんね。でも、渉太くんが好きな律仁さんなら、渉太くんの決めたことならどんな答えでも受け入れてくれるんじゃないかな」 そんな渉太にも優しく真剣に答えてくれた花井さんに申し訳なく感じながらも、彼女の言葉に少しだけ気持ちが軽くなった気がした。  正直、自分が断れば律仁さんを落ち込ませることになると知っているからこそ、渉太の意志を受け入れてもらえるか不安だった。   だけど、渉太の意志としては彼と共に歩むのであれば自分もそれに見合った人間でありたい。もちろん寂しさは拭えないけど、守られるだけじゃなくて、彼を守れる存在でありたいから……。

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