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幸せな記念日②

「そんなことないよ。渉太からのプレゼントは素直に嬉しいよ?それにお揃いだし」  箱から渉太が贈ったネックレスを取り出して見せてくる。お洒落な律仁さんだから洋服の邪魔にならないようなシンプルなデザインのバータイプのネックレス。 「律仁さんに喜んで貰えたらなら良かったです……」 「喜ぶも何も嬉しすぎて、肌身離さずつける気でいるけど?渉太は私の最愛の人なんて渉太も言うようになったね?」  我ながら顔が火照るくらいに恥ずかしいが、プレートには「S is the love of my life. 4.29」と刻印してもらった。意味は私の最愛の人は早坂渉太と記念日の日付。勿論律仁さんのネックレスの隣に並べて箱に収まってあった渉太の方のネックレスには律仁さんのイニシャルが彫ってある。  自分が恋人に刻印付きのアクセサリーを贈る日が来るとは思わなくてただでさえ、擽ったい気持ちが、律仁さんに煽られたことで余計に恥ずかしくなる。 「か、揶揄わないでください。これでも俺なりに考えたというか……。だったらいいなっていうか……」  食事の際に嗜んだワインのアルコールも相まってか身体が火照るほど熱い。両腿の間に両手を挟めて居たたまれない気持ちでいると、律仁さんに背後を取られて首元にヒヤリと冷たい感触がした。  胸元に落とされ、首に掛けられたネックレス。ちゃんと律仁さんのイニシャルが彫られた自分のもの。 「だったらいいな……。じゃなくて、最愛の人でしょ?」 「……はい。俺だって……。律仁さんは俺にとって最愛の人です……」 「渉太……」  背後から律仁さんの筋張った腕が回ってきては渉太を抱き竦めてくる。 首筋に顔を埋めてきた律仁さんにキスをされ、渉太は思わず漏らしそうになる声に口を噤んで堪えていた。 完全に律仁さんはその気であることは雰囲気から感じ取れるが、今はまだ流されて事に及ぶわけにいかない……。  プレゼントとか記念日の御祝いで甘いムードの中、水を差すようで心が痛いが渉太にはもう一つ彼に告げなければならないことがあった。

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