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幸せな記念日⑤
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ワインを乾杯して御祝いを仕切り直した渉太は、桃などのフルーツの乗ったショートケーキを食べることにした。途中で律仁さんにケーキが刺さったフォークを差し出されて躊躇ったが、恥じらいながらも差し出されたケーキに被りつく。お返しに渉太のケーキも一欠けら掬って差し出すと、少しだけ耳朶を赤く染めながらも被りついてくれた律仁さんが可愛かった。
ケーキを食べ終え、ほろ酔い気分でうとうとと眠気に誘われながらも部屋のソファで寛いでいると律仁さんが隣に座ってきて顔を寄せてきた。
「渉太ってお酒入ると眠くなるタイプだよね?」
頭をぼーっとさせながら近づいてくる律仁さんの顔を眺める。普段であれば直視などできずに伏せてしまうのに今日は、羞恥など微塵も感じずに、ずっと眺めて居られる。
「そんなことないですよ」
律仁さんが髪に触れてくる感触が心地いい。
「ある。瞼落ちそうだけど。初めて会った時も渉太、酔っぱらって熟睡してたじゃん」
「そーれしたっけ」
間延びした声で答える。シラを切っているものの自覚はあった。律仁さんと初めて会った日、衝動的に呑んだ酒に溺れて、その場に眠りこけて醜態を晒してしまったことを忘れるわけがない。
あれ以来警戒をして普段であればアルコールに手を出していなかったけど、今日は特別な日だからと彼に心を許して嗜んだ。正直なところやはり眠い……。
渉太は瞼を擦ると、律仁さんの距離が徐々に近づいて唇を寄せられた。
「まだ俺は渉太を寝かせたくない気でいるんだけど?」
律仁さんの問いに応えるのも億劫でこくりと頷くと背中と膝裏を持ち上げられ、御姫様抱っこをされる。
律仁さんの甘い匂いに、誘われて首筋に顔を埋めては幸福感で満たされていた。先程の甘いケーキを連想させるほどの律仁さんの匂い。首筋の肌色が白いクリームの上に乗せられていた白桃のように思えて、歯を立てて甘噛みしてみると「こら、しょーた」と満更でもない声で怒られた。
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