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幸せな記念日⑥
その反応が面白くて何度も甘噛みしているうちに寝室のキングサイズのベッドまで運ばれ、鉛のように重い体が白い布団の上に沈み込む。視界の先の窓には夜空に瞬くビルの夜景が見える。そんな景色を堪能する暇もなく、律仁さんが覆い被さって渉太を見下ろしてきた。
「しょーた。ここ、どうしてくれんの?明日の撮影で襟元の広い衣装着る予定なんだけど?」
律仁さんが自身の右首筋を指差して渉太を問い詰めてくる。欝血痕というより、くっきりと歯型の形跡がある。甘噛みのつもりでいたが、どうやら割と強い力で噛んでしまっていたらしい。
律仁さんの職業柄気を遣わなければならないと頭の隅では分かっていても、理性より欲求の方が勝り、両手を伸ばして彼の首筋に手を回して引き寄せると、少しだけ上体を起こして噛みついた痕跡を宥めるようにキスをした。
「こーすれば、治ります」
唇を離して、脱力するように再び体をベッドへと沈める。直後に律仁さんは深く頭を沈めると悶えたように唸り始めた。耳朶から首筋に掛けて茹で上がったように真っ赤に肌を染めている。
「もうダメ、我慢の限界」と低めの声で呟いてきた律仁さんは、渉太の首筋に顔を埋めてくると「仕返し」と言って、痛いような心地いような力加減で噛みつかれ、肌に吸い付かれるようにキスをされた。
口づけを落とされながら脱がされる洋服に、抵抗感はない。むしろ火照った体が暑くて全て脱ぎ去ってしまいたいくらいだった。律仁さんに手伝うように時折上体を起こしてすべての衣類を脱ぎ去ると律仁さんの洋服もベッドの外へと投げ捨てられる。
触れる肌の感触が心地よくて渉太の気持ちを昂らせては、律仁さんが指先で胸元や腰、脇腹に触れてくる感触に敏感に反応して何度も甘い息を漏らした。彼が下半身に顔を埋めていつものように口淫をしてこようとしたとき、渉太は彼の髪の毛を梳き撫でるように抑えると慌てて膝を立てては、上体を起こした。
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