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冒険者って憧れるよな②
「クリスの魂が戻る確率は?」
「ありえないことだ。魂は循環する。元の身体に戻ることは魔術を持ってしてもありえないんだよ。生まれ変わりというのを聞いたことがあるだろう。魂は馴染む器へと移動し新たな生として産まれるんだ。目の前の彼はその循環の特殊ケースというところかな」
つまり俺の魂がクリスの身体にたまたまピッタリフィットしたってことか。
「言ったはずだよ。人を生き返らせるなんて不可能だと。魂を呼び出す儀式にはリスクがある。クリスが死んで悲しみに暮れていた君に儀式の術式を教えたのは僕だけれど、その結果、中身の違うクリスが生まれたとしても責任は取れない。ダリウスもそれは承知だったはずだ」
待てよ……。リアムの話をまとめるなら、クリスはやっぱり既に死んでいて、ダリウスが行った儀式によって俺の魂が呼び出されたってことだ。てことは、俺がこんな状態になったのはダリウスのせい。
「受け入れるさ。ただ、忘れられてしまったのは少しだけ寂しいと思ったんだ。それに、クリスの身体に彼の魂が入ったのは儀式のせいだけではないようだからね」
「というと?」
「彼は俺の運命の番なんだよ」
「それは興味深い」
たしか、運命の番ってのは魂で繋がってるんだっけか。だとしたらダリウスが魂を呼び出す儀式をして、俺の魂が呼び出されたのはその影響が強いってことだよな。
不思議な話だけど実際に起こってることだし、受け入れるのは正直まだ無理だけど、この出会いは必然だったのだと思えば気が少しは楽になるような気がしている。
「だから結婚を申し込んだのだけれどふられてしまったんだ。照れているのかな」
「照れてねーよ!」
思わずツッコンでしまってからハッとする。リアムから注がれる視線が痛い。
「中身は違ってもこのやり取りは健在か」
「ふふ、クリスもこんな風にいつも俺に怒っていたよね。懐かしいな」
ダリウスの瞳が俺の姿を映しながら、亡くなってしまった恋人の影を追いかけている。それが少し嫌だと思うのは、運命の番とかいうやつのせいだろうか。
「お前が突拍子もないこと言うからだろ。てか、リアムとダリウスってどういう関係なんだよ」
話をそらしたくて尋ねれば、二人が顔を見合せたあとに少し考える素振りをした。
「俺とリアムは冒険者をしていたんだよ。前まではパーティーを組んでいたのだけれど、俺が冒険者を辞めてしまってからは交流していなかったな。リアムも冒険者業は辞めてしまったのかい?」
「誤解だよ。僕はまだ冒険者を続けている」
冒険者という言葉に男心がくすぐられてしまう。異世界といえば冒険者ってくらい聞きなれた言葉だ。日本に住んでいた頃は憧れたりもした。まさに男のロマン。
「俺も冒険者になれるのか!?」
思わず大きな声が出てしまう。ワクワクが止まらない。知らない世界に来てめちゃくちゃ不安だけど、同時に楽しみでもあるんだ。小難しいことはわからないし、ダリウスは変なことばかり言ってくるけど、結局楽しんだ者勝ちだしな。
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