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冒険者って憧れるよな④
「はぁっ、んん……ダリ、ウスっ」
「可愛い」
身体から力が抜けると、支えるように腰に手が回されて、耳元で囁かれた。恥ずかしすぎてマジでどうにかなりそうだ。
「やっ、やめろよ!!」
力の入らない身体を無理に動かして、ダリウスの胸を叩く。
「本当は閉じ込めて俺以外の人間の目に触れさせないようにしたいんだけどね」
物騒すぎる台詞に鳥肌が立つ。こいつマジでやばいやつだ!
「怖いって。マジでやめろよな」
身体に力が入り始めたから、押し退けて少し距離を取る。見計らったかのようにリアムも帰ってきたから、ダリウスはそれ以上なにもしてこなかった。
「交渉が終わったようだね。早速ギルドに行こうか。ダリウスが再起したと知ったら皆驚くはずだよ」
「どうかな。十年顔を出していないし冒険者証の更新もしていないから、またF級からやり直しかもね」
「冒険者って階級とかあるんだな」
F級からってことは、俺も冒険者になったらF級からになるのか。楽しみだ。階級ってどのくらいまであるんだろ。
「F〜Sまでの階級があって、リアムはS級だよ」
「S級!?」
驚きすぎて大きな声が出てしまった。
「そういうダリウスもS級でしょ」
リアムの返しに更に驚いてダリウスを見ると、肩をすくめる動作をされて首を傾げる。
「昔の話だよ。言った通り数年に一度冒険者証の更新日が定められていて、怠ると階級が一からになるんだ。冒険者証も捨ててしまったしね」
「それならここにあるよ。僕が代理で更新は済ませてある。貴重なS級だから、特別措置を許可してもらったんだ」
「……捨てて欲しいとお願いしたはずなのだけど」
「保険さ。こういう日が来るかもしれないと思っていたからね」
リアムからゴールドの冒険者証を受け取ったダリウスが、微かに嫌そうな顔を浮かべたのが見えた。相当冒険者が嫌なんだってことが分かる。
過去になにかあったのは間違いないけど、聞ける雰囲気でもない気がした。
家を出るとそのままギルドへと向かう。相変わらず目深なフードは外させてくれないままだ。
「なあ、このフード必要か?」
「それがないと大騒ぎになるからね」
ダリウスの言葉にリアムも頷く。二人がそう言うなら仕方ないか。
前が見え辛くて邪魔だけど我慢しよう。
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