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冒険者って憧れるよな⑥
「依頼はあちらの掲示板に貼ってあるものを受けることが出来ます。階級によって分けられていますので、階級が上がれば受けられる依頼も増えていきますよ。F級なら薬草摘みがオススメです」
「薬草取るくらいなら俺でも出来そうだな」
「油断大敵ですよ!スライムや一角兎などのモンスターも出現しますので、怪我だけはしないでくださいね。まあ、リアムさんとダリウスさんが一緒なら大丈夫だとは思いますが」
「気をつけるよ。アリスちゃんありがとな!」
さっそくダリウスが見ている掲示板へと近づく。街人からの依頼がほとんどみたいだけど、S級とかになると王族から直接の依頼とかもあるみたいだ。それだけ強くて信頼度が高い証拠なんだろう。
「クリスでもこなせそうな依頼があったから先に選んでおいたよ」
ダリウスに依頼書を手渡されたから、受け取って内容を確認する。アリスちゃんも言っていたとおり薬草摘みの依頼だった。ハープ草ってのを二十個。なにに使うのかはまったくわかんないけど、これを受けることにした。
丁寧にハープ草の絵も描いてあるからわかりやすい。
「ハープ草は傷薬を作るのに使うんだよ」
リアムが丁寧に教えてくれる。
「リアムってそういうの詳しいのか?」
「普通だよ。ハープ草くらいなら誰でも使い方は知っているし」
「そうなんだな!今度別の薬草のことも教えてくれよ」
色々知れるのが楽しくてリアムに顔を近づけたら、ダリウスに襟首を掴まれて引き離された。胸板に後頭部が当たって、微かな衝撃が走る。
「近い」
「引っ張んなよ〜。いいだろ、別に」
「良くない。薬草のことなら俺だって教えてあげられるよ」
正直リアムに教えてもらいたい。なんなら、ダリウスとはできるだけ距離を取っていたい。キスされたことが思い出されて顔が熱くなる。
前世でキスとかしたことがなかったわけじゃない。ただ、恋愛対象が同性で、ずっと隠して生きてきたから、こうやって堂々とスキンシップを取られるのは慣れてないんだ。
後ろから抱きしめられるような形になっていて、心臓がやたらと激しくなり始める。こいつに触れられると心がザワつくからなんか変な感じになるんだよ。
「イチャつくなら他所でやってよね。僕は帰るよ」
「えっ!?リアムは一緒に薬草摘み行かないのか?」
「二人で行きなよ。それに、もう夕方だし行くなら明日の方がいいよ」
指摘されて窓の外を確認すると、たしかに夕焼けが外を照らしているのが見える。いくらダリウスが一緒にいたとしても、夜は危ないだろうし、俺自身初めてのことばかりで疲れが溜まっている気がしていた。
「リアムの言う通りにしよう」
「そうだな。リアムありがとうな」
ダリウスに手を引かれて、大人しくギルドを出る。
子供じゃないんだから手なんて繋ぐ必要ないのに、振り解けないのはなんでなんだろうな。
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