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コツがあるんだよ②

朝一番に、薬草摘みへと出発した。 ダリウスと一緒に森の中を歩きながら、辺りを見渡してハープ草を探してみる。森の中なら、どこにでも生息しているから見つけやすいとダリウスが教えてくれたけど全く見つからない。なのに、ダリウスの腰に下げられた薬草袋の中には、大量のハープ草が入れられていた。 「全然見つかんねー!ダリウスはなんでそんなに簡単に見つけられるんだよ」 「コツがあるんだよ。ハープ草は日の当たりすぎない場所を好むから、木陰に生えていることが多いんだ」 言われた通りに木陰を探してみる。そうしたら木の下にハープ草が生えているのを見つけることが出来た。嬉しくて思わず笑みが浮かぶ。 周りから掘り進めて根から採取すると、薬草袋へと放り込んだ。ダリウスが採取したもので充分数は足りているけど、俺は人だよりじゃなく自分で探したいから、ハープ草探しを続けることにする。 「ギィィ!」 立ち上がって歩き出そうとしたとき、頭に角の生えた大きな兎が草むらから飛び出してきて驚いた。 「これってアリスが話してた一角兎か?」 「そうだね。君は下がっていて」 言われるまま後ろに下がると、ダリウスが腰に指していた剣を抜いて踏み込んだ。そうしたら一瞬で一角兎が倒されて、何事もなく剣を収めたダリウスが隣にいた。早すぎてなにも見えなかった。ただ、凄いとしか、表す言葉が見つからない。 ダリウスって変態なだけのやつじゃなかったんだな。 「ダリウスって凄いんだな」 「ふふ、ありがとう。クリスに褒められるのはいい気分だね」 クリスじゃないけど、今は否定する気にもなれないくらい感動している。俺もモンスターを倒せるようになりたい。 「素材を回収しようか。一角兎の角はそこそこの値段で買い取って貰えるからね」 「肉とかはどうするんだ?」 「兎肉は案外美味しいんだよ。今夜のディナーは兎肉だね」 ところなしか嬉しそうな所を見るに、ダリウスは兎肉が好きなのかもしれない。 ダリウスが魔法を駆使して手際よく一角兎を捌いていくのを見つめる。 案外面倒見がいいんだよな。きっとクリスにも優しかったんだろう。俺はクリスがどんなやつだったのか未だにわかんないけどさ。 「そろそろ帰ろう」 「おう」 隣を歩きながら横顔を盗み見る。こんなに知識があって強いのに、どうして冒険者を辞めたんだろう。 「なあ、ダリウスは冒険者が嫌いなのか?」 「どうしてそう思うの」 「冒険者に戻りたくなさそうだったから」 リアムが説得してくれなかったら、きっとダリウスはここにはいない。俺も冒険者にはなれなかったかもしれないし。 だからこそ、そこまで冒険者をしたくない理由が気になる。 「S級冒険者になっても、力を磨いても、一番大切なときになにも出来ないなら意味なんてないと知ったからさ。それに冒険者は高みを目指すほど色んなものに縛られていくものだからね」 「……よくわかんないけど、嫌なことがあったんだな」 それはきっとクリスに絡んでいることなんだって、なんとなくわかる。直感というやつなんだろうか。 それ以上はなにも教えてくれなくて、ひたすら無言の時間が続く。どうしてだか、彼が悲しんでいるような気がして、慰めてやりたくなった。だから、ダリウスの空いている右手をそっと掴んで、指を絡める。 「……どうしたの?」 こんなこと普段なら絶対しないけど、今だけは繋いでいたい。 「こうやって手を繋いでおけば、お互いになにかあったときは助け合えるだろ。だから大丈夫だよ」 「……うん。ありがとう」 眉を垂れさせながら笑うダリウスに俺も笑みを返す。ダリウスの抱えているものは俺にはわかんないし、難しいこと考えるのも苦手だけど、笑ってる方がいいってのはわかる。だから、ダリウスには笑ってて欲しい。

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