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交換条件と威嚇⑤
「君は本当にライト騎士団長ではないんだね」
「当たり前だろ。てか、そのライト騎士団長っていうのやめろよな。クリスでいいよ」
本名を教えることもできたのに、あえてそうしなかった。
この世界で一番最初に俺の名前を呼ぶのは、ダリウスがいいって、なんとなく思ったから。
十分くらい歩くと、周りの建物よりも二回りくらい大きな屋敷に着いた。
中から騎士みたいな人が出てきて、エドの方に駆け寄ってくる。
「エド王子!探しましたよ」
「やあ、ジェイデン騎士団長」
「やぁ、じゃっありませんよ!護衛も付けず、突然居なくなるから騎士団まで派遣されて大騒動だったんですからね!」
エドが居なくなって相当大変だったのか、ジェイデンと呼ばれた彼は見つかった安堵で口調が少し荒い。
「それはすまないことをしたね。街を視察していたんだけど、護衛がいると目立ってしまってね」
「そこは我慢してください。足の怪我のこともありますし、もしも貴方になにかあればクリスが報われません」
「……あぁ、そうだね」
ジェイデンの言葉を受けて、エドの表情が微かに暗くなる。やっぱりエドはクリスに対してなにか思うところがあるのかもしれない。
それに、俺自身ジェイデンにも見覚えがある。
「ところで連れている人物はどなたですか。フードなんて被って、怪しさ満点ですけど」
失礼なやつだ。不躾な態度は昔から変わらないみたいだな。
(ん?昔から……?)
どうしてそんなことを思ったのか自分でもわからない。ただ、一瞬ジェイデンと楽しげに話をしている映像が頭の中に流れてきて驚いた。
もしかして、クリスの記憶か?
「彼は友人なんだ。心配はいらないよ」
「そう言われましても、エド王子に関わる人間は確認するのが規則ですので。すまないがフードを取ってもらえるか」
取らないと返してくれなさそうな雰囲気だ。
どうせエドには見られているんだし、ここには他に人もいないからかまわないだろう。そう判断して、フードへと手を伸ばす。
「無理をしなくてもいいんだよ」
エドが心配げに声をかけてくれるけれど、べつに無理はしてない。正直、俺は顔を見られようとかまわないから。ただ、ダリウスやリアムが心配するから隠しているだけだ。
「大丈夫。ほら、取ったぞ」
「……お前は……」
視界が開けると、ジェイデンの顔がよく見える。やっぱり俺はこいつを知っている。多分、ずっと昔から仲のいい親友とかなんじゃないかな。断片的な記憶からそう結論づける。
記憶を辿りながら見つめていると、ジェイデンが勢いよく両手で肩を掴んできた。
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