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お留守番③

エドの涙が止まるのを待ちながら、ダリウスの顔を頭に浮かべる。俺をエドに任せたのはドラゴンの件があったからなのかもしれない。 トラウマってやつなのかな……。知ってしまうと、心配するダリウスの気持ちを否定はできない。 「……恥ずかしい所を見せてしまったね」 落ち着きを取り戻したエドが、眉を垂れさせる。 俺はなにも気にしていないし、少しは過去に区切りを付けられるのなら、お易い御用だ。 「そんなことないよ。そういや、ジェイデンは居ないんだな」 騎士団長だし忙しいのかもしれない。エドの護衛は別にいるみたいだし。 「彼は訓練場で指導をしていると思うよ。ここにいても退屈だろうし行ってみるかい?」 「いいのか?」 丁度訓練場に行く約束もしていたし、エドの提案は嬉しい。 「ああ、行こうか。支度をしてくるから待っていてくれるかい」 「ありがとうな」 支度のためにエドが退席し、執務室に一人残される。することもなくぼーっと窓の外を眺めていると、今いる場所から街を一望できることに気がついた。 「クリスはすごいよ」 騎士団長として、最後までこの街を守り抜いたんだよな。本当に格好いい人だ。 窓に映る自分の顔を見つめ返す。知れば知るほどに、ダリウスがクリスのことを好きになった理由がわかってしまう。 「俺もあんたが好きだよ」 へらりと笑いかけてやる。そうしたら当然、窓に映るクリスも笑い返してくれた。 「待たせたかな」 戻ってきたエドに声をかけられて振り返る。立ち上がると、歩み寄って首を振る。 「全然待ってないよ」 「よかった。出発しよう」 並んで執務室を出る。護衛も数人着いてくるみたいだ。こうやって気安く会話してるけど、エドって王太子様なんだよな。不思議な感じだ。

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