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お留守番⑤

俺ももっと強くなるよ。そうしたら少しはダリウスに背を任してもらえるくらいになれるだろうか。 「ところでこれってどうやって解くんだ?」 拳を下ろすと尋ねる。防御壁を作ったはいいものの、消し方が分からない。 「木剣に触れて、排出した魔力を体内に戻すイメージをするんだ」 「……体内に戻すイメージか……」 言われた通りに柄を握り、魔力を木剣から吸い取るイメージを浮かべてみる。すると、防御壁が少しずつ薄くなり、最後には割れて光の粒子へと変わり飛散した。 自分が魔法を使えていることに感動している。同時に、ジェイデンでも破れないほどの防御壁を作ることの出来るクリスの能力にも驚きだ。 「お前ら!今見たものは他言無用とする。もし、噂の一つでも俺が耳にしたら、どうなるかわかっているな!」 ジェイデンの指示に衛兵達が一斉に返事をする。それを聞きながら、これ以上騒ぎが大きくなる前にそっとフードを被り直した。 「すごい戦いだったね」 拍手をしながらエドが歩いてくる。なんだか照れくさい。 「まぐれだよ」 「ふふ、それでもジェイデン騎士団長に勝てたのだから大したものだ」 エドは嬉しそうに言うから、ますます気恥しい。 「エド王子の言う通りだな。これなら、冒険者としてもっと上を目指せるはずだ」 「本当か!?」 「ああ。俺は嘘は言わない」 嬉しくて思わずニヤケてしまう。 確かに、守護の魔法があれば怪我をすることも減るだろう。ダリウスの役にもたてるかもしれない。 ダリウスが帰ってきたら教えてやらないと。 「冒険者といえば、ダリウスは調査に向かったそうだな。大丈夫だとは思うが、心配だろう」 「無事に帰ってくるって信じてるよ。リアムも一緒だしな」 あいつらが怪我をする想像なんてこれっぽちもできない。 話をしながら、木剣をソードラックに立て掛ける。衛兵達は訓練に戻り、俺もエドと屋敷へ戻ることにした。 「邪魔して悪い」 「もっと居てくれてもかまわなかったのに」 「流石に悪いよ。今度飲みにでも行こうぜ」 「いいな」 同意してくれたジェイデンに笑みを返してから、エドと共に訓練場を出た。 魔法を使ったときの感覚が未だに残っている。手を開閉させながら、忘れないうちにまた練習をしようと決めた。

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