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サークル
とりあえず、色んなサークルのチラシや
ポスターを見てみたけど…
どうにも気になるところがない。
どうせならスポーツ系がいいなとは思っている。
高校までしていたバスケは
志貴も同じ部活で
あいつの方が圧倒的に運動神経も良かったから
あまりいい思い出がない。
「双子なのにな…」と顧問に渋い顔をされたのもトラウマだ。
3年生の時に情けでスタメンに入ったけど
志貴は1年の後半から試合に出ていた。
かといって、ピンとくるスポーツがない。
同好会は週一回しか活動がないし
部活は素人にはきつそうだな…
かといって、名ばかりの飲みサーも嫌だ。
冴木はというと"経済金融を学ぶ同好会"とかいう名前の麻雀の同好会に入った。
麻雀やりたいだけじゃないか。
俺は興味ないしな…
今のところ、バスケの同好会か
創作ゲームの同好会か…
両方のポスターを見比べていると
「君、1年生?」と声をかけられた。
「え、はい」
俺はその男の人のコミュ力の高さに驚きつつも
曖昧に頷いた。
「サークル入るの?」
「あ、はい。この夜バスケ同好会か、創作ゲームを愛する会で悩んでて…」
「あ、バスケ同好会は俺が部長なんだよ。
こっちのゲームの方は、かなりガチだから知識ないと入りづらいと思うよ。
よければ、ぜひうちに」
と、その人は手を差し出してきた。
「ご丁寧にありがとうございます。
じゃ、じゃあ入ってみようかと思います」
俺は流されるまま、その手を取る。
「え!?いいの!?
いや、誘っておいてなんだけどさ
今度見学においでよ。
体験入部でもいいし!
俺、部長の高山。あ、ライン良い?」
あれよあれよという間にラインを交換し、
今週の金曜に見学することになった。
その後、高山さんは「やべ、バイトだ」と言って慌ただしく去っていった。
バイト先も探してみようかと思ったけど
なんだかこれだけの事で疲れてしまい、
俺は今日のところは帰ることにした。
アパートに帰ると志貴はすでに部屋にいて
ソファに座って携帯をいじっていた。
「ただいま」と声をかけると「おかえり」と言われた。
実家にいる時と何ら変わらない。
変わったのは俺の、志貴への印象だけだ。
俺、こいつに復讐したいと思われるくらい嫌われてるんだよな、と思うと
なんだか変に意識してしまい、気まずい。
「優聖、晩飯どうする?」
「え?あ…、なんか作ろうかな」
「カレーがいい」
「え?」
「カレー食べたい」
「はいはい」
自分で作れ、と言いかけて
志貴の家事が絶望的であることを思い出した。
家事だけは俺が志貴に勝てるところだ。
俺たちに平等に接している母親でさえ、
志貴のスキルの無さに驚いて
家事の手伝いは俺にしか頼まなかったくらい。
「材料買ってくるわ」
と、俺は家を出た。
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