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シーフード

引っ越してすぐに確認しておいたスーパーに入る。 着々と材料を購入し、冷凍シーフードのコーナーで思わず目を見張った。 志貴はシーフードカレーが好きなので、 実家ではよく作っていたんだけど シーフードミックスってこんなに高いのか! 材料はいつも母親が買ってきていたから、何とも思わずに使っていたけど… 仕送りで生活する身なのだから節約しないと… 志貴に「豚肉のカレーでいい?」と聞こうとして携帯を忘れてきたことに気づいた。 慌てて確認するがさすがに財布は忘れていなかった。 少し悩んだけれど、復讐を少しでも先延ばしにするため、俺は泣く泣くシーフードを購入した。 これで少しは好感度が上がるといいんだけれど。 いそいそと自宅へ戻ると、先ほどと同じ格好で志貴はソファに座っていた。 全く、のんきなやつめ。 「聞けよ、志貴。シーフードってめっちゃたか…」 「誰、これ」 「…は?」 よく見ると志貴の手にあったのは俺の携帯だった。 勝手に見たのか、と少し腹が立った。 「いくら兄弟でも勝手に携帯を見るのはっ」 「夜バスケ同好会って何? サークル入るの? 俺よりバスケ下手なのに?」 俺の携帯の画面にはさっき知り合ったばかりの高山さんから『金曜の、夜バスケ同好会なんだけど、○○体育館押さえたから、そこに来てもらえる?』というメッセージが映し出された。 勝手に携帯を見られたことにも、馬鹿にするような顔でそういわれた事にも腹が立って、俺は携帯を奪い取ろうと志貴に掴みかかった。 「うるさい!関係ないだろ!!」 そう叫んで、不意を突いたつもりだったが、体格差なのか運動神経なのか、俺は逆に床に押し倒されていた。

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