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粘着

それから、目が合うなり「可愛い」と言われたり、やけに距離が近かったり、 とにかく気持ちが休まらない。 俺にとって志貴は可愛い弟だ。 こんなことされても困る上に おそらく刷り込みだと思うから 一刻も早く正気に戻って欲しい。 同じ布団で眠ろうとする志貴を振り払って 俺は自分のベットに入る。 自室に鍵をつけておいてよかった。 鍵さえかけて仕舞えば奴は入ってこれない。 翌日は大学が終わった後に 面接に行く予定だ。 講義の後、行ってみるとその居酒屋は チェーン店ではないけれど 子綺麗な感じで女性のバイトが多かった。 「いやぁ、男の子が来てくれて助かるよ。 ビールの樽とか、ジョッキとか結構重いからさ、男手が欲しかったんだよ」 と、そんなに大した面接を受けるでもなく 採用が決まってしまった。 拍子抜けしたけど、一つ、気がかりなことが解消されたので少し気が楽になった。 たくさん入りたいとお願いしたが、 扶養もあるし、とりあえずは週3でということになった。 あとはサークルもあるし、とりあえず、週に5日は予定があることになる。 他の日は早く友達を作って予定を入れるとしよう。 それから、シフトの話や持ち場の話なんかをしていたが、開店時間になったので 邪魔をしないように帰ることにした。 昨日よりもずっと帰るのが遅くなってしまったな… 時間を確認しようと携帯を見て、俺は固まってしまった。 志貴からすごい量の不在着信とメッセージが届いていた。 「今どこ?」とか「電話出ろ」なんていう強気なメッセージから始まり、 後半は「お願い、返事して」とか「俺のこと、嫌いになった?」とか、俺に懇願するようなメッセージになっていた。 放っておくべきか? いやでも、家には帰らなきゃいけないし、返事はした方がいいよな。 俺は深いため息を一つついて、 志貴に電話をかけた。 ワンコール鳴り切る前に志貴が出た。 「優聖!?」 「あ、悪い。電話出れなくて」 「無事なの?何にも巻き込まれてない?」 「何にも巻き込まれてねぇよ。落ち着け」 「電話に出ない優聖が悪いだろ。 今まで何してた?どこにいる? ちゃんと今日、帰るよな?」 「そんなに一気に聞くなよ。 今から帰るから、帰ってからでいいだろ? テキトーに食材買って帰るわ」 「…、わかった。なるべく早くね」 「はいはい」 俺は煩わしくなり、電話を切る。 あー、なんか帰りたくねぇ… 重い足を引きずりながら、俺はスーパーに向かった。

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