11 / 58
よく遭遇する先輩
スーパーでダラダラと買い物をする。
俺のレパートリーなんて、大した量がないからカレーとオムライスを出してしまうと
あとはなにを作っていいか分からない。
食材を眺めながら行ったり来たりしていると
「優聖くん」と声をかけられた。
驚いて顔を上げると高山さんがいた。
「あ、こ、こんにちは」
「うん。っていうかこんばんは?」
「そうですよね。高山さん、お家この辺なんですか?」
「もうちょっと遠いよ。大学と自宅の間にこのスーパーがあるから良く来るんだよね。
優聖くんはここから近いの?」
「はい。とても近いです」
「自炊なんて偉いな。なに作るの?」
「それが…、もう俺が作れるものが尽きてしまって…」
「え?あれ?入学式から何日だっけ?」
「…、3日っすね」
そう言うと高山さんは腹を抱えて笑った。
「2品だけで自炊派になろうとしてるの凄くない?」と笑いながら言った。
確かにそれはそうだけど、そんなに笑わなくても…
その気持ちが顔に出ていたのか、
「そんな顔しないでよ。優しい優しく高山さんがいいレシピ教えてあげるよ」
と、言って僕を連れて買い物を再開した。
「やっぱりね、丼物がコスパいいよ」
そう言って携帯でレシピを調べるでもなく
どんどんと材料や調味料をカゴに突っ込む。
「あとはテキトーに親子丼のレシピ調べれば、作れると思うよ」
「あ、ありがとうございます」
家にない調味料も買ったからなかなかの量になったし、会計もそこそこした。
が、「これだけ調味料揃えたら、あとはどんどんかかる金額が下がっていくから。自炊は初期費用が高いの」と、高山さんが言う。
家が近くて良かった、と思いつつ千切れそうな袋の取っ手を掴んで「じゃあ」と、高山さんに言うと
「いやいや。俺が色々買わせたし、手伝うよ」
と言ってくれた。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
と僕は袋の一つを手渡した。
ついでにこの調味料たちで作れる他のレシピも聞いておこう。
話しながら歩いているとあっという間にアパートに着いた。
ここでいいです、と階段の下で伝えたが、
「どうせなら部屋も見たい」と高山さんが言うので部屋の前まで来てもらうことにした。
ドアの取手に手をかけると、鍵がかかっていなかった。
全く…、地元と違ってここは少し治安が悪いんだから、志貴に気をつけろと注意しなきゃ。
高山さんに「何もないところですけど、上がりますか?」と聞いていると、
志貴が玄関まで出てきた。
ともだちにシェアしよう!