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手錠

「志貴、ただいま。 あ、こちらが先輩のたか…」 「今までコイツといたの?」 「は?」 高山さんを紹介しようとして、志貴がキレていることに気づく。 っていうか、先輩であることはともかく、初対面の人をコイツ呼ばわりするなんて失礼すぎる。 「志貴。ちゃんと挨拶しろ」 「うるさい。俺のこと放っておいて、優聖はコイツといたんだ。信じられない」 「えっとぉ…、俺はここでお暇しようかな。 じゃあね、優聖くん」 高山さんは並々ならぬ雰囲気に気づいたのか、買い物した袋を俺に手渡すと、玄関のドアに手をかけた。 「高山さん、本当にすみません! 明日の夜、よろしくお願いします」 「うん。じゃあ」 そう言って高山さんはこの部屋を後にした。 全く、志貴が信じられない。 「今のはサークルの先輩…、っていうか部長。 バイトの面接して、スーパー行ったら会っただけ。っていうか、ずっとあの人といたとして、 ああ言う態度はどうかと思う」 「同じサークル?バイトの面接? 俺に黙ってなにやってんの?」 「はぁ?同じ家にいるとはいえ、なんでお前にいちいち言わなきゃいけないんだっ…!?おい!」 本腰入れて喧嘩をしようかと思った矢先、 志貴が俺の腕を強く引いた。 待っていた重いビニール袋が大きな音を立てて床に落ちる。 「ちょっと!荷物が!」 と抗議するも腕を引いたまま、ズンズンと部屋の中に入っていく。 袋の中には生の鶏肉なんかも入っているから、すぐに冷蔵庫にしまいたいのに… そのままソファに押し倒された。 「ちょ!?志貴!なんなんだよ!」 俺は志貴を睨みあげるが、志貴は冷たい顔で俺を見下ろしている。 昨日と同じ構図だ… 「優聖がこれ以上俺から離れようとするなら手段は選べない」 「は?何言って…」    徐に腕に、がちゃんと何かをはめられた。 「え?」 銀色に鈍く光る輪っかが付けられている。 鎖の先はどうやら、どこかの柱に固定されている。 「本当は使いたくなかったけど、今日、全然電話出てくれなかったから覚悟を決めたんだ」 「何言ってんの…?」 本格的に恐怖で俺は体が震えた。 っていうか、手錠ってなに? なんでこいつが持ってんの? 「優聖は俺から逃げられないんだよ。 これからゆっくり教えてあげるね」 俺の上で不敵に微笑むこいつは 一体誰なんだ?

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