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血が繋がっていないのに
「お、落ち着こう。な、志貴。
ゆっくり話したいから、これ外してくれないか?」
まだ春の初めだというのに俺は全身から汗が流れていた。
人生で初めて拘束というものをされていて、かなり不安な気持ちになっている。
「言葉じゃ分からないよ、優聖は」
言葉じゃわからないって…、一体何で分からせるって言うんだ?
「な、殴るのか?」
それなりに活発な男の子だったけれど
流石に殴り合いの喧嘩をしたことはない。
痛いのは辞めていただきたい。
「俺は優聖が好きなんだよ?
そんなことするわけないよ」
「じゃあ…」
一体何をするつもりなんだ?と言いかけた唇は、覆い被さって来た志貴に塞がれた。
「んんっ!?」
何が起きているか一瞬、理解が遅れたが
目の前に広がる志貴の端正な顔に
弟と唇を合わせていることに慌てる。
過度なスキンシップはギリギリ許してきたが
これは普通の兄弟ならしないことだ。
離してもらおうと踠いていると
少しの唇の隙間から志貴の舌が入り込んできた。
「んぅ…、んっ」
気持ち悪いのに鼻から声が抜ける。
っていうか、ファーストキスなんですけど!?
将来の可愛い彼女と、と決めていたファーストキスを俺はなんで弟としているんだ?
舌が縦横無尽に動き回り、
離された頃には息が上がり、
俺の口からはどちらのものか分からない唾液がこぼれ落ちていた。
「こんなので息上がっちゃうんだ。
もしかして初めて?」
志貴が微笑みながら指で俺の唇を拭う。
恥ずかしさで顔が熱くなった。
「こういうのはっ、兄弟でするものじゃないだろ!やめろ!」
俺は志貴を睨みあげた。
「ほらね。優聖は俺に反抗するでしょ。
そんな態度でいるうちは、手錠は取らない」
「なっ…」
態度がおかしいのは志貴の方だろう。
俺は至って正論を言っている。
「血が繋がっていないのに、兄弟だなんておかしいよ。両親より先に、俺が優聖と出会えれば良かったのに」
志貴が悲しそうな顔をする。
もしも、志貴が弟になっていなかったら
俺は多分お前とは関わらなかったと思うけど。
無言でいる俺を数秒見つめた後、また、志貴の顔が近づいてきた。
またキスされる!と、俺は急いで顔を逸らした。
が、舌打ちをした志貴に顔を掴まれ、無理やり唇を合わせられた。
まるで、逃げられないぞ、と言われているようだった。
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