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リストバンド

風呂から出ると志貴は外出しているようだった。 まあ、晩飯は勝手にしろと言ったから外食にでも行ったのかもしれない。 俺は宣言通り、布団に入る。 自室の鍵をかけようとしたら、後から取り付けた鍵が破壊されていた。 あいつ… と、再び腹が立ったが、だいぶ疲れていたので俺は仕方なくそのままにしておいた。 目を閉じただけで、睡魔がぐんと押し寄せてきて、俺は眠りについた。 朝起きると案の定、同じ布団の中に志貴が入っていた。 こいつ、何も反省してない。 俺は巻きつけられた腕を引き剥がすと、学校に行く支度をするべく、起き上がった。 また部屋に鍵をつけたいけれど、どうせまた壊されるんだろうな。 昨日、晩飯を抜いたせいでかなり腹が減っている。 悩んだけど、仕方なく、志貴の分も作ってラップをかけておいておく。 こいつ、いつも俺より家出るの遅いけど ちゃんと一限目とか間に合ってるんだろうか。 学校に着いてすぐ、高山さんに謝っていないことを思い出した。 構内で会える気もしなかったので、とりあえずラインで謝っておく。 午前の講義が終わり、学食で飯を食べているとラインの通知が来た。 『こちらこそ、急に家に行ってごめんね。 ちゃんと弟さんと仲直りできた? っていうか、全然似てないね笑』 高山さんが怒っていないようでホッとする。 金曜日のサークルの日、改めて謝っておこう。 そして微妙に答えづらいところを突かれて、俺は返答に窮する。 血が繋がっていない、とか言ったら ややこしくなりそうだし、 家庭のことをたかだかサークルの先輩に 教えるのも憚られる。 『似てないってよく言われます。 本当にすみませんでした。 明日、よろしくお願いします』 何度か消したり打ち直したりを繰り返して なんとか送信ボタンを押した。 その後は、明日の夜のサークルの詳細やメンバーについての連絡のやり取りが続いた。 部活にいい思い出はあまりないけど、 久々にバスケができるのは少しワクワクする。 怪我しないようにしないと、と思い ふと自分の手首の怪我を思い出す。 また春だから長袖で隠せているけれど 動いたら暑いよな… 両手にリストバンドつけてサークルに行くの、張り切っているような感じがして少し恥ずかしいけど、仕方ないか… 家に帰ったらリストバンド、探してみようと俺は考えた。

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