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お揃い

今日は残念ながら、夕方の予定がなく 渋々家に帰った。 昨日作られなかった親子丼を作ろう。 あと、リストバンドとバッシュと…、サークルに必要なものを準備しよう。 家に帰るとまだ志貴は帰っていない。 ゴソゴソと自室を探してみたけど リストバンドはひとつしか見つからない。 新しいの、買うか…? 準備した荷物の前で唸っていると、志貴が帰ってきた。 俺の姿を見つけると「ただいま」と言い、 「なに?バスケすんの?」と首を傾げた。 「…、うん。明日の夜。サークルで」 また志貴が不機嫌になるのでは?と思ったが、上手い誤魔化しが思い付かず、うなづいた。 「ふーん。で、なんか実家に忘れたの?」 「いや…、あ!そうだ。お前、リストバンドないか?」 「え?あるけど」 「1個貸してくれない?」 「いいけど」 あっさりと志貴は頷き、すぐに部屋から持ってきてくれた。 「あ、俺がもってるのと同じやつじゃん」 某スポーツ用品メーカーのロゴが入った黒いリストバンドだ。 「2個入りのやつ、2人で分けたじゃん。 優聖とお揃いのやつだからちゃんと返してよ?」 「お、おお」   不意打ちで好意を寄せられると反応に困る。 お揃いとか気にすんなよ、気色悪いな。 俺はそんなふうに考えつつも、仕方なくそれを受け取る。 そもそも、こいつが手錠とか使わなければ、リストバンドなんて要らなかったのに。 不服そうな顔をしてそれを荷物の中に突っ込んだ。 志貴に背中を向けた隙に、また志貴からバックハグをされた。 「課題する。ご飯できたら教えて」 と耳元で言われ、気持ち悪さに震えていると 頭頂部に唇を落とされた。 「うぇ…」 思わず声が漏れる。 志貴は満足したように俺から離れ、自室に行った。 こんなキモいことされるのも無理すぎる。 しかし、抵抗してしまうと昨日のようなことをされるのでは、と思ってしまう。 どうやって彼を正せばいいんだろう…

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