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首のマーク

後ろから志貴に羽交締めにされた。 「ちょっ!?なに!?」 「油断するのが危ないって分からせる」 「はぁ!?」 腕から逃れようと踠くが、びくともしない。 相変わらず馬鹿力。 「ひっ…」 腕に気を取られていて、ふいにうなじを齧られ、へんな声が出た。 「や、やめろ!気持ち悪い!」 ブンブンと首を振るが、強めに噛みつかれて 痛みに震えてしまった。 「ほら、ここ出してると危ない」 「いてぇから離せ!」 「自分で振り解けなきゃ意味ない」 「こんなことするやついないって!」 志貴は深いため息をついて少し腕の力を抜いた。 やっと解放される、と思った途端に 首にチクリと痛みが走った。 それにリップ音も聞こえた。 「お前!なにしてっ」 志貴から離れて首に手を当てる。 奴の唾液でぬるっとしていた。 こいつ…、キスマを!? 「結構クッキリついてるよ。明日、行くのやめれば?」 「信じられない。顔も見たくない。 2度と俺の部屋に入るな」 俺は志貴を睨みつける。 志貴は少し怯んだ顔をした。 自室に入って強めにドアを閉める。 本当に信じられない。 兄にそんなことするか、普通。 こんなの見られたら、俺、ヤバめの彼女がいるって勘違いされそう… 慌てて鏡を見ると、後ろの方に吸い付かれたのに、正面からも若干見える程度の広範囲に内出血が広がっていた。 これ…、どうやって隠すんだよ… 最近暑いけど、首まで長さのあるインナーで隠すしかないか… 明日の夜は涼しくなるといいんだけど… 不貞寝をして、寝苦しさで朝起きると 普通に同じ布団の中に志貴がいた。 こいつ、俺があんなに怒っても全然効いてない。 ため息をついて、支度をする。 っていうか、学校で着る服も首が隠れるやつじゃないといけないじゃん… 本当にめんどくさいことばっか起こす。 さっさと社会人になって、こいつと離れて暮らしたい。 学校後、テキトーに時間を潰してそのままサークルに行くつもりだったので 昨日準備した荷物を持つ。 それだけで、今日は久々にバスケができる と少しテンションが上がった。 しかも、志貴抜きでバスケができる。 俺は気持ちを切り替えて家を出た。 あいつの朝飯なんて知るか。

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