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あざ

講義を終えて、構内のカフェで時間を潰す。 今日のサークルで友達ができたら 夜までの時間を一緒につぶしたりできるのかな、と俺は淡い期待を抱いていた。 時間が迫ってくるとソワソワしてきて ちょっと早い気もしたけど 俺は体育館に向かった。 そこは市営の体育館で、俺の地元の体育館よりも色んな施設があるようだった。 市営なのに、プールも武道館も、弓道場まである。 うちの大学の部活とかでもよく使ってるかもしれないな。 やはりまだ誰も来ていないようで 俺は入り口の前で携帯を見て時間を潰す。 10分くらいすると、高山さんが現れた。 「あ、優聖くん。早いね」 「遅れたらって思ったら、なんか心配で…、早く着きすぎちゃいました」 「やる気があっていいねぇ。 まあ、同好会だから遅れても誰も何も言わないから安心して」 そう言いながら、高山さんは体育館の鍵を開けた。 「あの、こないだの件…、弟がすいませんでした」 「こないだ…?ああ…、あの日のことか。 全然気にしないで。 あ、優聖くんも着替える?」 「あ、はい。一応、服持ってきました」 高山さんは気にしていなかったようなので、 この件はもう触れないでおこう… 「じゃあ、一緒に着替えよう。更衣室案内するよ」 「ありがとうございま…」 そこまで言いかけて、自分の首のあざを思い出す。 せっかく首まであるインナー持ってきたけど 一緒に着替えたらバレるじゃないか… 「どうした?忘れもの?」 「いやっ…、大丈夫です」 「そう?あ、こっちね。向かいにあるのは女子の更衣室だから入らないようにね」 「はい」 高山さんが荷物を放り込んだ棚から一つ開けて隣に俺も荷物を入れる。 この距離で着替えたら秒でバレるけど 一緒に入ったのに距離を取るのも 失礼な気がして俺は服に手をかけたまま 固まっていた。 「え?どうした?」 「あ、お気になさらず」 「?」 高山さんが不思議そうな顔をして 次々と服を脱ぐ。 ちゃんとスポーツしてる人の体型だ… 同好会といいつつ、高山さんは別のところでも何かしらスポーツをしてるのかもしれない。 俺は固まっているわけにもいかず ままよ!と服を脱いだ。 いそいそとインナーを手に取るが 「え!?怪我!?」と高山さんが 大きな声を出した。 「あ、ええっと…、まぁ…」 「あ、もしかして、彼女とか?」 俺が渋い顔をしているからか、高山さんが察したようにニヤリという顔をした。

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