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ペットかよ
徐に立ち上がった志貴を目で追う。
「おい。とりあえずこれ外せ」
手首に繋がれたままの手錠をガチャガチャと揺らした。
確かに手首のところは痛くないが、頭上でまとめられているため、肩が痛くなってきた。
何かを手に取った志貴が戻ってきて、カシャっという音がした。
撮られた。
「お前っ!?何撮ってるんだ!消せよ!!」
「優聖が逃げたらこの写真をばら撒く」
「やってること分かってんのか?
お前が撮ったって分かったら、お前も…」
お前もただじゃ済まないだろ、と言おうとしたが
こいつは世間体なんか気にしたことがない。
俺を好きに出来ればそれでいいのだろう。
「っくそ、信じられねぇ…」
俺は忌々しく吐き捨てた。
どうしてこうなったんだろう…
志貴がお湯で濡らしたタオルで俺の体を拭き始める。
やることやったし、バスケもしたし、体を拭いたぐらいでは気持ち悪さが消えない。
風呂に入りたい。
頭も洗えないし…
「逃げないから風呂に入らせろ」
「…、だめ。今日はダメ。
ずっとそばにいてほしい」
じっとりと志貴を睨み上げたが、どうやら意志は硬そうだった。
「はぁ…、とりあえず手錠外してくれ。
肩が変になる」
「あ、ごめん」
そう言ったが、手錠を外すことはなく、柱の方へ行き、何かいじっていた。
「はい。紐、伸ばしておいたよ」
「は?」
確かに手の可動域がだいぶ広がったが、手錠はついたままだ。
「これなら楽でしょ」
「本当にこれを外す気はないのか?」
「…」
志貴は気まずそうに頷いた。
好きだったら、相手を家畜やペットのように扱ってもいいと言うのだろうか。
俺はこんな歪んだ人間を大切な弟だと可愛がっていたのだろうか。
朝になったら全てが解決していることを祈って、俺は布団に入った。
当たり前のように志貴が添い寝してくる。
「うざい。触るな」
「…」
どんなに突き放すような言葉を吐いても、志貴が俺から離れることはなく、疲れもあって眠ってしまった。
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