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第34話

そろそろ家を出る時間になり、 俺はカバンを持って玄関に向かった。 やはり、少し足腰の動きがぎこちない。 18歳とはいえ、流石に数時間じゃ回復しないか… 初出勤日なのに、うまく動けるのかな… 本当に志貴なんか嫌いだ。 「無理しない方がいいんじゃない?」 「学生のバイトとはいえ、当日欠勤なんかできるわけないだろ」 「真面目だね」 俺は少しふらつきながら家を出て、バイト先に向かった。 俺の様子を見た店長が「え!?具合悪い?無理しなくていいよ、休む?」と心配してくれた。 が、 「家にいたくなくて…。迷惑はかけないので、働かせて欲しいです」 と、懇願した。 今帰ったら、負けた気がする。 仕事用の服を渡され、今日はホールのサポートをしてほしい、といわれた。 人生で初めてのバイト、緊張するけどワクワクする。 あとは体が健康な状態ならよかったんだけど… 着替えて仕込み中の店長から口頭で色々と仕事のやり方を聞いていると、他のバイトの人が来た。 「この子、新入りの優聖くん」 「あ、はじめまし…、え!?優聖くんじゃん! 昨日ぶり〜!」 「えっ?あ!先輩!」 昨日のバスケサークルに参加していた女の先輩がそこにいた。 早々に知り合いがバイト先にいるなんて…、とても助かる。 「え!?同じ大学なの?じゃあ、ちょうどよかった。咲ちゃん、ここのプロだから何でも聞いて」 「任せてください」 店長に紹介された咲先輩は胸を張った。 サークルの時もたくさん話しかけてくれて、高山さんに次ぐ頼りになる先輩だ… ホールの開店準備や基本的な仕事を教えてもらう。 あれよあれよという間に開店時間になり、土曜ということもあり、予約の客や新規の客がどんどん入る。 先輩もじっくり教える余裕がないらしく、俺はとにかく、自分にできることからやる。 忙しいし、分からないことだらけで目が回りそうだけど、働いているという実感があって少し楽しかった。 家にいて志貴に好き放題されるよりずっといい。 休憩を挟みつつも、ラストオーダーの時間が過ぎ、お客さんも減ってきた。 「時間空いたし、賄い、なんか食う?」 「え!?いいんですか!?」 店長からの提案で俺は賄いをいただくことにした。 おすすめのメニューを出してもらう。 居酒屋のご飯ってこんなに美味いのかと感動した。

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