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宿泊
咲先輩が「お先でーす。今度、飲み会しようね」とニヤニヤしながら帰っていった。
友達でも親戚でもない人の家に泊まるなんて初めてだから俺はソワソワしていた。
その数分後に「よし、じゃあ帰るか」と店長が声をかけにきた。
「本当にうちでいいの?実は家に帰りたいとかない?」と店長は不安そうだったが、
家に帰って志貴に無理矢理されることを考えると、帰りたくなかった。
「急にすみません。その、迷惑でしたら、断って頂いて大丈夫です」
と俺は言った。
「いやいや。どうせ寂しい独身おじさんの一人暮らしだから、人がいるのは嬉しいことだよ」
そんなこんなで、俺は店長と連れ立って家に向かった。
店長は店の近くのマンションに住んでいた。
部屋はそこそこ広いのに、何も荷物がなく、がらんとしていた。
「何にもないでしょ?店にいることが多くて、寝に帰るだけの家だからね」
と、驚く俺に店長は苦笑した。
「咲ちゃんを筆頭に、うちのバイトの子は人懐っこくて、おじさん、仲良くしてもらえて嬉しいんだよね」
「親しみやすいんですね。俺、大学で全然友達できそうになくて…、仲のいいバイト先で安心しました」
「合わない子は合わないけどね」
そんな話をしながら、店長は着々と寝る支度を整えていく。
「この布団使って」と床に敷かれた布団を勧められた。
しっかりした寝具だ…
泊まって行く人、本当に多いんだなと思った。
俺は初出勤や自宅でのあれこれのせいで疲れていたこともあり、お言葉に甘えて寝っ転がった。
そこからぷっつりと記憶がない。
深い眠りに落ちていた。
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