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帰宅

朝起きると部屋の明るさ的にもう昼前といった雰囲気なのに、店長は腹を出して寝ていた。 久々にぐっすり眠れた… 俺は満足して、春のまだ寒さの残る気温を心配して、店長に布団をかけなおした。 さっと買い物を済ませ軽い食事を準備していると、店長が起きた。 「え!?飯がある!!」 「あ、すみません。勝手にキッチンをお借りしました。 大したものじゃないんですけど、店長もどうですか?」 「いいの!?手料理なんて、何年振りだろ。 食材とかもなかったよな、買ってきたのか?」 「はい。昨日ここにくるまでにスーパーを見つけていたので」 バイトの行き来の時に買い物ができる場所がある、というのは大切なことなのでリサーチしながら歩いていた。 「いくらだった?」 店長が財布を出そうとするので慌てて止めた。 「大したもの買ってないので!それに、泊めていただけて助かりました。久々によく寝たって思いながら起きれました」 「ほんとに?じゃあ、お言葉に甘えて。いただきます」 店長は軽食に箸を伸ばし、「うまいな」と言いながら食べてくれた。 無言のくせに要求はしてくる志貴と比べて、なんて作りがいのある…、と少し感動した。 3時になったら出勤する、と店長が言うので、俺は「おせわになりました」と家を出た。 もう、何日でも泊まりたかったけど 流石にバイトも入ってない日に来るのは 面の皮が厚すぎる、と遠慮した。 あえて電源を切っていた携帯の電源を入れた。 すると、大量の不在着信とメッセージが入っていた。 案の定…、志貴からだ。 こうなると思ったから電源を切っていたのだ。 本当は帰りたくないけど、月曜から大学もあるし、どちらせよ帰らなくてはならない。 ふいに、自宅から志貴が出てくるのが見え、俺は咄嗟に塀の影に隠れた。 財布だけ持っているので、コンビニかどこかに行くのだろう。 スマホを観ながら、俺に気づくことなく、出かけて行った。 今のうちに、しれっと家に入ってしまうか。 俺は、そっと自宅に帰った。 ここで、必要な荷物とかまとめて、ここでてしまおう。 店長にバイト代が出るまで住まわせて欲しいとお願いすれば、なんとかなるのでは!? 最悪、実家に帰るという手もある。 時間はかかるけど、実家からも通えないというわけではない。 そんなふうに考えて、荷物をまとめていると、 「何してんの?」と怒気を含んだ声が聞こえて 肩を跳ねさせて、慌てて顔を上げた。 とても怒っている様子の志貴が俺の部屋の入り口に立っていた。

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