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捕縛

「えっと…、あ、ただいま」 慌てて口をついて出たのが、ただいまって…、マヌケにも程がある。 「何してんの?って聞いてるんだけど」 「何って…」 そもそも、お前があんなことしなければ、俺は誰かの家に泊まったり、ここを出て行きたいなんて思うことはなかったのに。 こいつ、なんで自分がやったことを棚に上げるんだと思ったら少し腹が立った。 「お前と一緒に住むのが嫌だから出て行こうとしただけだけど?」 挑戦的に睨み返すと、志貴は一瞬たじろいだ。 が、「この写真、ばら撒かれてもいいの?」 といつかの俺が手を拘束されて如何にも事後みたいな顔をしている画像をちらつかせた。 「っ…!?勝手にすれば?」 卑怯者と罵りたいところだけど、こういうのは毅然としている方が強いだろう。 「ふーん。こういう脅しが効かないなら、物理で縛るだけだけどね」 「は?」   あれよあれよという間に、志貴に抑え込まれ、後ろ手に手錠をかけられた。 まるで、現行犯の逮捕の瞬間のようだ。 「は!?離せ!!こんなことしたって俺はお前なんか好きに…」 なるわけないだろ!と言おうとしたが、 志貴は「優聖の心なんかいらない」と またいつぞやのセリフを口にした。 だからって、人を傷つけて良いのか? 少なくとも俺は、心身ともに傷ついている。 そう言うと、「俺がつけた傷で優聖が汚れていくなら本望だよ」と、声色に笑みまで含んで言い切った。 信じられない… 俺が助かる術はもうないのか…? 「さ、お仕置きをしよう。2度と優聖が逃げようなんて思わないように」 そう言うと志貴は俺を軽々と担ぎ上げ、自分の部屋に連れ込んだ。 そこは、入居した時とは様変わりした、まるでラブホのSMルームのような装いだった。 これから俺は、いったい何をされるんだ…? 恐怖で歯がカチカチと鳴り始めた。

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