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再会の熱
腕の中で志貴の体が強張っているのがわかる。
構わず俺は、彼の背中を撫でた。
「弱くてごめん。俺がちゃんと志貴の気持ちを受け止めてあげれれば良かったのに」
「…、違う。優聖は悪くない。ごめんなさい」
志貴の体から力が抜け、俺を抱き返してきた。
志貴が顔を埋めている俺の肩が湿る。
泣いているんだろう。
「とりあえず、部屋入れてくれる?」
俺が猫撫で声で聞くと、志貴は頷いて、踵を返して部屋に戻る。
部屋の中は荒れていた。
暴れた後はないけれど、ゴミや服が散乱していた。
これ、半年この状態だったのか?
もっと早く帰れば良かった。
「俺、ここに戻るよ。だから、今度ちゃんと掃除しよう」
「…っ!で、でも、もしもまた優聖と住んだら、俺は同じことを繰り返すかもしれない」
「…、いいよ。まあ監禁は嫌だけど、それ以外なら許そう」
「えっ…、それはその…、せっ…くすとかも?」
「…、お前なぁ…」
志貴ってこんなに性欲モンスターだったか?と呆れた。
でもそれは覚悟の上だ。
「まあ、許してやるよ、それも。その代わり、他の人にはするなよ」
「するわけない!俺はもう、優聖以外に立たない」
「なっ…!?」
冗談だろう、きっと。
実の兄にしか立たないなんて、EDよりも酷い気がする。
「優聖」
部屋に入って人目がないからか、志貴が俺を抱きしめ、唇を合わせる。
啄むような、確かめるようなそれがどんどんと激しくなる。
久々のそれに俺は酸欠でクラクラした。
力が抜け、倒れそうになると志貴ががっしりと俺を抱き留め、さらにキスが深くなる。
脳内を犯すようなキスの水音に、脳がぼんやりしてくる。
気持ちいい。
唇が離れる間際、ちゅっと名残惜しそうに俺の下唇を吸い上げた。
切ない恋愛ドラマの恋人同士のような振る舞いに、少し腹が立った。
だから、俺たちは兄弟だろって。
けど、その後も俺を熱のこもった目で射抜き、頬を撫でる志貴の熱い手に、俺も欲情してしまう。
「もっと…しないの?」
冷静な時に聞いたら、気持ち悪くなるような、甘く強請るような声が出た。
志貴がひゅっと喉を鳴らした。
「ここで止めないと…、やめられない」
「良いって言ってるのに」
そう言ったら志貴が急に自分の顔を自分で殴った。
「は???」と俺が混乱していると
「まだ優聖がいる…。夢じゃない」と
涙目で志貴が笑った。
そんな弟が愛おしいと思ってしまった。
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