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第6話 権の勝敗

ぅぉ~… なんか、なんか、なんだろ。 映像からちょっと成長した本人が目の前にいるのが、とっても不思議な感覚。 「でも、写真とか動画とか撮られて、レンさんはいいんですか?」 「んー?べつにいいよ。見たい人がいれば、見てみればいいんじゃない?」 「でも、そーゆーのって、いいんですか?その、世間的に、倫理的に、」 「うん、僕はいいよ。見てていいと思ってるから。」 と、僕の目の前で、まだ全裸のままでいるレン本人がいる。 「僕の体を見てくれるって、僕にとっては、ちょっと嬉しいんだよね。僕の体で気持ちよくなってくれるんだったら。」 「へぇ~…。でも、えっと、よくない事とか、されることもあるんじゃないですか?」 「うーん、あるかもね。今までそういうことは無かったけど。」 「なかった?」 「うん、1回も。」 へぇーと思った。 「僕よりかっこいい人って、いくらでもいるから、僕が出て行っても、見向きもされないで埋もれちゃうんだよね。今の世の中、このカメラのデータみたいに、撮った中から必要な枚数って数枚しかないでしょ?他の千枚は、そのまま消されちゃう。だからネットに僕の写真が出たところで、見向きもされないで埋もれていくだけ。たとえずっと残ってることになるかもしれないけど、探さなきゃ、出てこないよ。だから気にしてない。」 またへぇーと思った。 「世界中のSNSなどでは、写真が1日に6億枚アップされているんだ。1日で、だよ?その中から、特定の写真1枚を見つけることって、タグでも付いてなければ、物理的に無理だね。」 って、本人はそうは言ってるけど、 「だけど、分かってて悪用しようとする人は、いるんじゃないですか?」 「いるかもね。」 「その時はどうするんですか?」 「放っとく。」 「放っとく?」 「気にしないな。」 「それって、いいんですか?」 「被害がなければ、放っとくね。」 「被害を被ったらどうするんですか?」 「気にしない。」 「え?えぇ??」 「どーせ、死にやしないよ。だから、放っとくね。」 「そ、そうなの?」 「まず、『なぜその映像を見たんですか?』って言うね。僕のヌードを見たんですか?って。なんて答えるか、見ものだね。」 「あ、ぁあー…、まあ、そうだよな。」 「で、その画像で、僕をどうしたいの?って聞く。」 「…ふーん…」 「それでセックスしたいって言うんだったら、じゃ、やろ、って言えばいいだけ。」 なんか、強いな。 「ヌード撮られたということは、立場的には、僕が被害者だから、訴えることが出来るんだよね。つまりは、僕の方が立場が上だということだな。でも、僕は気にしないという選択肢を選ぶね。」 へぇ~…? 「訴えたところで、僕にとってのメリットというものは、ほとんどない。そして、訴えられた人にとっても、メリットがない。そう考えたら、立場はそのまま維持しておいて、自分が上に立っていることを維持し続ける、ということかな。放棄じゃなくて、いつでも訴える立場に居続ける、というかな。」 へ、へぇ~… 「ま、僕は、メリットがないから、訴えるようなことはしないな。だから、訴えないんだったら、その人は無実だけどね。」 な、なんか、哲学なのかな?丸め込められた感じも、しないではないけど。でも、それだったら、その人のやりたい放題じゃないのかな? 「その人にとって、僕を起用して、メリットがあるんだったらやるかもしれないけど、言ったろ?僕なんかよりも、もっとカッコいい人って、たっくさんいるんだから。僕は埋もれるだけさ。だから気にならない。」 哲学というよりは、現実的な話、と捉えてもいいのかもしれないな。 *  *  *

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