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第11話 最後のスコティッシュフォールド②
ガラスの向こうに、立っている人影が見えた
プレイルームはプレイヤーの部屋は煌々と明るく、客の部屋は薄暗くなっている
椅子に座ってくれればかろうじて光が届くから顔がわかるのだが、立ったままだと全くわからない
背格好には見覚えがあるから知ってる客だとは思う
そしてストーカーまがいなことをした例の客ではないこともわかった
それだけで安心して最後のプレイができる
だが、イチゲンサンだろうが常連客だろうが、顔を見なければ始まらない
ミナミはずかずかとガラスに近寄った
「こんばんはー」
ガラス戸を覗き込むように客を見上げた
「え?!長谷川さん?!」
そこにいたのは、バーのオーナー・長谷川だった
「お前の仕事ぶりを見に来たよ」
「はぁ?!」
ミナミは頭の中が真っ白になった
「まあ、最後の面接みたいなもんかな」
長谷川はやっと椅子に腰かけた
「うわっ…あんたそういう趣味だったの?」
「まあね」
「やりにくいなあ…」
だが決して嫌悪感を抱いたわけではない
客として来た意図もなんとなく理解できた
「ここのオーナーからも頼まれてね。餞別と支度金代わりにイロつけてやるから、最後の仕事、誠心誠意客 に尽くせよ?」
ミナミはプレイに臨む際のタキの表情を思い浮かべた
あの顔を見たときから、一度やってみたいと思っていた
そのチャンスはもういましかない
ミナミは深呼吸をしてガラスの向こうの長谷川を見据えた
体から自意識がスーッと抜けていった
「お名前は、エーイチさんでいいの?」
ミナミは手にアルコールスプレーを吹き掛けて擦り合わせた
「電話ではH って伝えたつもりだったけど、受付 が聞き間違えたかな」
「なにその聞き間違い。ウケる」
ミナミはショートパンツに指をかけて膝で立つと、長谷川と向き合った
「俺にバーテンダーのコスなんかさせて平気なの?仕事場で勃っちゃうんじゃない?」
長谷川は顎髭を撫でながら、無言でミナミを見つめた
ミナミが口の端から舌をちらつかせた
「あんた、オレをどうしたいの?」
「舐めろ」
ミナミはゆっくりとガラスに近寄ると、半開きの口をガラスに押し付けた
吐息でガラスが曇っていった
イメージフェラを希望する客は、ほぽ全員が自分のモノをガラスに押し付けてプレイする
だが、長谷川は椅子から立ち上がることはおろか、ズボンのチャックすら下ろさない
せめて勃っているかどうか確認したいが、足を組んでいて見ることができない
ミナミは目を閉じてガラスに舌を這わせた
「はぁッ」
唾液がガラスを伝って流れ落ちた
ミナミは次に、唇で歯を隠して横向きに咥える真似をした
長谷川は、バーに来たミナミの常連客からミナミにはまる理由を聞いたことがあった
その客は、最初の咥える仕草を見ただけであとは目をつむっても本当に舐められている気がしてイッてしまうのだと言って、照れ臭そうに笑った
その時、長谷川は『そんな童貞じゃあるましいし』と言ってバカにしたが、いま、ミナミのプレイを目の当たりにすると、むくむくと性欲が沸き上がってきて本当にイケそうな気がした
ミナミが右手で筒を作り、その上の方をチロチロと舐め始めた
それから口をすぼめて、その見えない筒を咥えた
ビクッと長谷川の体が動いた
(嘘だろ…)
ミナミは目をつむっているから、長谷川の体の反応は見られてはいないはずだ
長谷川はマイクに向かって
「そのまま、目を閉じてろ」
と指示した
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