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第34話 アメショとのら猫⑤
ホームページで発表されたその謝罪文は、騒動の直後に発売された【Tout 】に全文掲載された
その号は売り切れが続出し、フリマサイトで高値で取引されていることがメディアで報じられた
九とトワのフォロワーは共に4倍に増え、雑誌で特集が組まれた谷根千には、雑誌の特集タイトルに地名を載せないという配慮がされたが、発売後にはおしゃれな若い観光客が増えた
プッシールームについてもネット上で取り沙汰されたが、オーナーが【当分新規は受け入れない、プレイヤーの指名は過去に指名したことがある客のみ】という方針を打ち出したことで、プレイヤーや店に大きな混乱はなかった
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騒動から3か月が過ぎた
トワは、あれからネットTVの討論番組やYouTuberとのコラボ企画に呼ばれることが増え、収入が月100万を越えるようになった
来月にはプライベート写真集とムック本を出すことになっている
写真集には一枚だけ九との2ショット写真が掲載されていている
事前発表はないが、発売されて話題になれば売り切れは必至だろう
九は相変わらずプッシールームで働いている
オーナーやマサト、何よりも常連客のお陰で、騒動前と変わらず働けているらしい
元々トワにとって、モデル業は小遣い稼ぎみたいなものだった
たが九と付き合いだしてから考えが変わった
この収入がいつまでも続かないことはわかっている
だから余裕がある今のうちに次の道筋をつかんでおきたいと思った
九と生きていきたいから
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九とトワは、日本橋室町の美術館で開催されているギュスターヴ・モロー展に来ていた
「これいいな。九に似てる」
モデル業のいいところは平日にも休みがあることだ
人気の企画展で、土日は混雑していると聞いていたが、平日のその日は空いていて、スムーズに見て回ることができた
「そう?生首持ってて怖いんだけど」
「きれいだよ」
「じゃあこの生首はトワね」
九が笑った
「それでもいいよ」
トワは今日、首を差し出すくらいの気持ちでここに来た
九に言いたいことがあった
いつになるかはわからないが、言い出すのにいいタイミングはどこかできっとあると思っている
その時、同じ部屋にいた別の客たちが一斉に次の部屋に移動し、一瞬だけ二人きりになった
トワはこの時をおいてほかにないと思った
「俺、家業を継ぐよ。九にもついてきてほしい」
九は、トワのその言葉を聞いても絵から目を離さなかった
そして、「反社はちょっとなー」と言って笑うとトワの手をそっと握った
「俺の夢、聞いてくれる?」
「何?」
「プッシールーム3号店の雇われ店長になりたいの。だからヤクザは手伝えないけど…」
九が背伸びしてトワの肩に顎をのせた
「それでもよければ、いいよ」
トワは九を抱き締めてその肩に顔を埋めた
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