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第42話 恋するスコティッシュフォールド

それは、3か月前のこと ※※※※※※※※※※※※ 「このコ、指名できますか?」 ミナミは持っていた名刺を黒服に見せた 雨の中落ちていたものを拾ったから、乾いてもボコボコに歪んだままだ 黒服はお世辞にもきれいとは言えないその名刺を不審そうに見て、次にミナミを値踏みした 遊んでそうな大学生 でも、妙に場慣れしてるから同業者 ボーイズバーのキャストか もしくは別のキャバクラに行き慣れてるか 原宿あたりで流行ってそうな服だけど、モノはよさそうだ 黒服はそんな風に判断したのかもしれない 特に何を聞くでもなく、ミナミをボックス席に案内した キャバクラは初めてだが、決して臆することはない それがミナミの長所だった 「あ、え?!やっぱりあの時の!」 明るく弾けるような声が聞こえた 席にやってきたのはアイナだった ミナミを見て、嬉しさを顔いっぱいに表してくれていた 「うわあ…嬉しい。また会いたかったんです」 ミナミはアイナが座りやすいように横にずれた アイナが座ると、控えめな香水の香りが漂ってきた 「わざわざ来てくれたんですか?電話くれればよかったのに…」 「電話?」 アイナはミナミの手の中の名刺を指差した 裏を見ると、手書きの携帯電話の番号が書かれていた ミナミは名刺をポケットにしまって、 「あの後、ホストクラブに行ったって聞いて、ちょっと心配になって…あんなことあったのに、店に行って大丈夫だったかなって…」 アイナはミナミが注文したウイスキーの水割りを作りながら、 「そうですね。ちょっと変なテンションになってたのかも。遊んで忘れたいって気持ちもあったから、長谷川さんに言われるまま行っちゃったけど、実はあれからホストクラブ()には行ってないんです」 アイナはグラスをミナミに渡して軽く掲げた ミナミもそれに倣った 「キリヤもいなくなっちゃったし、あんなことがあった店だから、純粋に楽しめなくなっちゃったんですよね。それに気になる人もできちゃって」 「へえ。よかったね。彼氏?」 ミナミは笑ってアイナの肩をこづいた アイナは「へへ」と笑って、 「片想いで、いつ会えるかもわからなかったんですけど、今日会えちゃった」 とミナミを見つめた 「…マジ?」 アイナはコクリとうなずいた ミナミは思わずアイナを抱き締めた すぐに黒服が飛んできた だが、アイナが「そういうんじゃないから大丈夫です」と言うと、黒服はすぐに下がった 「お兄さんから来てくれたってことは、少しはアイナのこと気に入ってくれてるって思ってもいいのかなって」 ミナミは首がもげそうになるくらいうなずいた

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